夢
それから夢を見た。
本当の本当に不思議な夢。
最初、私は一面見渡す限りの草原に立っていた。
木が一本も無く、地平線の果てまでもが草原で、とても澄んだ青い空。
何だかおかしい気はしたけど、凄く気持ちが良いから私は草原に座り込んだ。
すると風が悲しみを流すように吹き始めて、爽やかな気持ちにさせてくれる。
「隣、いいかな?」
不意に誰かから声を掛けられた。
当然、少し驚きはした。
でも私は誰かなのかを確かめもせずに、首を縦に振って了承する。
「いいですよ」
「ありがとう」
その人は静かに隣に座る。
なのに私は相手の顔を見ない。
「君は何で泣いているんだい?」
「え………?」
言われるまで気が付かなかった。
目から涙が溢れて、ポタポタと頬から雫が垂れ落ちていってる。
それだけではなく、いくら拭いても涙は止まらない。
「分からない。なぜ泣いてるのか私には分からない…。悲しいことでもあったのかな…?」
「…………」
「それとも寂しいこと?…ダメ、思い出せない………」
混乱する私を見かねてか、隣の人は私の肩に優しく触れて、少し抱き寄せてきた。
それで、なぜか懐かしい香りと温かさを感じた。
「セイナさんには何か大切なものはあったかい?」
セイナ……。
私の名前…、何でこの人は知っているのだろう。
私ですら自分自身の名前を忘れていたぐらいなのに。
そんなことを考え込みながら私が黙っていると、隣の人は言葉を続ける。
「私には大切なものが沢山ある。でも、そんな中でも特に大切なのが最近できたんだ」
「それは……何?」
「君だよ。セイナ・ミィラ・ルミエル」
名前を言われた私はハッとし、隣の人の顔を見た。
見慣れたたくましい顔で、短めの金髪に青い瞳。
私にとっては眩しいほどに輝かしい人物。
ずっと会いたかった人。
短い間会ってなかっただけなのに、まるで久々に会ったような懐かしい気持ちと喜びが湧き上がった。
「テラ…っ!」
私は思わずテラに勢いよく飛びついた。
するとテラはそのまま私を優しく抱きしめて、迎い入れてくれた。
「会いたかったよ、テラ!ずっとずっと……会いたかった!」
「泣かないでくれ、セイナさん。君の笑顔は素敵なんだ。だから私に、心から安らぐ君の微笑みを見せてくれ」
そう言われたテラに私は笑顔を浮かべてみせた。
作り笑顔じゃなく、心からの笑顔を。
そのとき、私から涙はなくなっていた。




