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「すきだ。君のことが」
寝静まった住宅街で、彼の小さな声がした。
「えっ?」
彼女は暗がりの中で、驚きを顔に浮かべている。
「君のことがすきなんだ。……こんなこと、言っていいのかなって、悩んだりもしたんだ。だって、俺は容姿が美しくない。運動ができない、勉強もできなかった。学歴もショボいし、就活にも失敗した。フリーターだし、しかもそのバイトだって辞めざるを得ない状態に、自ら追い込んでしまったんだ。……我ながら、バカだなぁ、って思うよ。
きっと俺は、君を幸せになんかできない。でも……でも、すきなんだ。こんな俺だけど、付き合って欲しい」
「バカか。お前は」
彼女は、呆れ顔で言った。
「告白をするって時に、自分のダメなところをアピールするヤツがあるか。ドアホウめ」
それは暗闇の中で――いつ変わったのか。それは、自分だった。
「シミュレーション、終了」