エピソード1『3つ目のバトンタッチ』(5)
髪型はやや長髪で、赤目。身から出すオーラは、赤系。長身で筋肉はあるようだが、それとなくやつれて見えた。
召還儀式の直後は召還酔いといって、呼ばれた対象は少し調子を崩すらしいが……それ以上に男には不快感があるように見える。
「……なんだ、これは」
男はくぐもった声で喋った。
「あ、あの」
俺は話しかける。
「お前が俺を……この世界に呼んだのか? 俺に試練を与えに来たのか?」
男はこちらを睨んでくる。何を言っているのかは分からないが、何かを憎んでいるようだ。
「ギィィィ!」
その時僕達の後ろで何かけたたましい声が遮ってきた。
「何?」
男は瞬時に振り向く。そこには翼を持った、怪獣がいた。ーーいや、怪獣ではない。ドラゴンだ。他の人が召還した中に、ドラゴンが居たようだ。
「……ドラゴン? どういう事だ? しかもこいつは結構な高位の……」」
男が眉を顰める。
「どうだぁ? すげぇだろ?」
唐突に聞こえる、幼馴染のジョイスの声。
見ればそのドラゴンの羽根の上に、ジョイスが居る。
「そこの人がお前の召還した人かよ?」
ジョイスはそのままこちらに対し自慢するかのように言う。
「何の事だかな」
男はすっとぼけながらも、周囲の様子を伺い始める。見知らぬ物が沢山あるかのようだ。
「……転移魔法のようなものを感じたが、何の為に俺を呼んだ?」
男はこちらを見てくる。
「えぇと、それは……」
助け舟を同じく幼馴染のアイラが出してくる。彼女の横に天使のようなロボットが飛んでいる。どうやら機械人形を召還したようだった。
「それは、この国に怪物が出るって話があるからです。助けて欲しいんです」
アイラが言った。
「……怪物?」
男の顔付きが険しくなった。
だがその直後。
「ぎゃあああああ!!」
叫び声が一つ。
同時に、人の血が飛んできたのが見えた。
「見るな!」
男はアイラの前に立ちふさがり、マントで視界を塞ぐ。
だが僕は見てしまった。
13人衆の12番。オーレ・ドーディチが、血を噴出して倒れているところを。
そして、その背後に両手が刃物になった、昆虫のような生物が居たところを。
「まさか! もうノルドシュトルムの手先が召還物に紛れ込んで!?」
老先生が驚いたような顔をして、男の横にくる。
「ノルドシュトルム?」
男は怪訝な顔をしながら老先生の方を向く。
「あぁ、それは異界からの怪物でーー」
老先生が言った瞬間、昆虫のような怪物は凄まじい速度で飛び上がり、ドラゴンの上に居た ジョイスに切り掛かった。
「ジョイス!」
俺は叫ぶ、が。
「ーーっ」
その言葉をいい終えないかのうちに、地面にジョイスの首がぼとりと落ちてきた。
間に合わ、なかった。
「キャアアアアアアアアア!!」
誰かの悲鳴が響く。
俺の視線と、落ちてきたジョイスの生首と目が合う。 そして、アイラもジョイスの首を見てしまった。
噴出すのは、赤黒い血。そしてジョイスの、体組織。
「ーー!」
事態の急展開に男の顔付きが変わる。そして、
「事情は飲み込めた。奴を処分する、いいな」
「お願いします!」
老先生が頭を下げると、
『タマチルツルギ!』
男は光る剣を何処からか取り出し、構えた。
「いいだろう。此処が何処かは分かりやしない。だが、俺は俺の道を切り開いてやる。まずは貴様から片付けてやるーー!」