エピソード1『3つ目のバトンタッチ』(4)
一晩して朝になり市の北部にある大広場にいくと既に12人の子供達が居て、それぞれ陣が出来ていた。
「まずいな、遅刻するところだったか」
俺も慌てて定位置に付く。暫くして他の人たちの前にも陣が出来、俺の前にはカラスのような色をした黒い陣が浮かんだ。
これは大人達が次元を繋げるための事前準備として作った物で、皆の魔力を奮い立たせようとするものだ。
ーーどんな子が、来るんだろう。俺は期待をしつつそう思う。恐らくは皆もそんな考えだろう。
近くにいる幼馴染のジョイスやアイラも、緊張したかのような面持ちでいる。
特にジョイスなんかは、昨日のような軽口を叩くような様子ではなく、至って真面目だった。それを見て俺もすぐに、周りから期待される僕という名の、ミラカナの態度に戻る。
「規定時刻です」
俺達を普段学校で教えている老先生が言い、各々召還準備に入る。
右手に召還用手袋を嵌め、自分の血液データを静脈認証し、世界にアクセスをするーー。
原理は人の命を解析し、近しいものを呼び寄せるという事らしい。
ネットワークアクセス。亜空間ゲート開放。ゲノム解析。ファイアーウォール解除。
「ーー召還!」
俺も右手を掲げ、叫ぶ。するとーー。
俺の視界に、何かが入った。
赤く光るオーブ、紫の髪の毛の女の人と、赤い髪の毛の女の人。
ーーそして、黒いオーラを纏った人影ーー。
それが何だったのか、理解は出来ない。でも、それはーー。
なんか、悲しい魂の色をしていたように見えた。
話している言葉も分からず、何もない。
だけど暗闇はこちらに近付いてきてーー。
「……俺を呼んだのは……貴様か」
気が付いたら黒いマントを身に纏った、死んだ目をした男が其処に存在していた。