エピソード1『3つ目のバトンタッチ』(2)
食事も終わり、自室に戻る。
適当に日報として羽根ペンで今日あった事を書き止め、明日に備える。
ーージョイスにはああ言ったが、俺自身は内省してみれば不安で仕方が無い、とも言える。
自分の知らない世界から現れた存在と仲良くしていくという事。それは超技術であり、本当は人間が扱うものではないと思う。
誰が正しいとか、誰が間違っているとかはいうべきではない。
でも、冷静に考えたら人間のやる事だとは、倫理的には思えない。
ノルドシュトルムという存在が何なのか、それもまずはある。
そして今回召還される存在にもまた、興味はある。その存在にも、元の世界で居場所があったはずだ。だというのに、異世界から何かを召還するのは傲慢であるとも考えられる。
けして、自分が学者になりたいからという訳ではない。だが、こうも考察したくなる理由は色々とある。それは、このレティウス13人衆というシステムは、旅行を数多くしてきたが他の都市にはまず見られなかったという事実を眼にしたからだ。
ひょっとしたら、王都ヒルトライは俺たちに何かを隠しているのかもしれない。
そう考えたが、俺の今の状況ではどうにも出来ない。
「クソ……」
俺は苦々しく思いながらも、ふぅと溜息を吐いた。
自分が今までみてきたよりも、世界はずっと広い。
でも、今自分の目の前に迫っている者は、ノルドシュトルムという敵の存在と、それと戦えという指令。
俺は、何をしたらいいんだろう。言われるままに動けばいいのか。でも、それで国が自分に感謝してくれるとでもいうのか。保障はあるのか?
色々考えてしまう、自分の心が厭だ。 本当に、厭だ。
全く、馬鹿でありたいものだ。