クトゥルフの終焉なんだが……
ゲマスをしたことは何度もあった。
しかし、ここまで運の悪いメンツでぐだぐだのTRPGをしたことはあっただろうか。
結構シーンはすっ飛ばしたけど……、病院は本当は三階建てだけど……。
でも、こいつらがこんなに楽しそうな顔をしていたら、まあいいか、と思ってしまう。
正直、BL本が見つかったのは誤算だった。本に興味のないこのメンツで、本棚に興味を持つ奴がいるなんて思わなかった。
他人の麦茶を飲むのもかなりの黒歴史だ。目白なら全然平気なんだけど……。『ち・きゅ・う・は・ひ・と・つ! おお、ペプシマ~ン、ペプシマ~ン!』とか歌いながら、目白のペプシを奪ったし。
「とにかく! 物語の真相を説明するよ!!」
俺は咳払いをして、口を開いた。
「この病院にはドラキュラが住み着いていたんだよ」
「ちょっと待って」
また秋葉原の『ちょっと待って』が始まった。
「渋谷くん、ゲーム中はずっと『ドラッキュラ』って言っていたじゃない」
しかもだいぶどうでもいい。
「それは……ただのキャラづくり、だね」
キャラづくりに関してはオフモードの時に言われると、ちょっと恥ずかしい。
しかし愉しいのだ。
みんなが事件に四苦八苦する様子を舐めまわしたくてしょうがないのだ。
「……あははー」
俺の変態発言に、秋葉原は心の籠っていない愛想笑いを返した。こいつは……。
俺は気を取り直してまた説明を始める。
「まあ、病院にドラキュラが住み着いていて、時々患者や職員を誘拐して血を飲んでいたんだよ。
その真相に辿り着いた看護師が、君たち四人を誘拐した。もう正常な精神状態じゃなかったんだね。
ちなみにドラキュラを倒したからもう結界が解けて病院の外に出られた。
君たちや看護師やマッチョはその後、精神科に入院したけど、すぐ回復したよ」
「なるほど! さっすが渋谷くんだぁ!!」
にっこり笑って池袋みなみが甘ったるい声で言った。
「きょ、今日はありがとうございました……。色々ごめっ、ご迷惑を……」
いつもの調子に戻った馬場高子が頭を下げると、俺は首を横に振った。
「いや、全然だよ」
「ほんとありがとう! 楽しかった」
そう言って秋葉原まなは目白かいを見やった。
「君は……楽しくなかった?」
目白は目を逸らした。
「いや……死ななかったし」
「えっ!?」
秋葉原は予想もしなかった返しに驚いた。
俺はなんと言えばよいかわからず、笑顔を保って何も言わなかった。
何はともあれ、大団円。めでたしめでたし。
はい。おしまい。
最後にネタ提供してくれた、渋谷、秋葉原、目白、馬場、池袋のモデルに感謝。