第三理「移動成功?」
突如、強烈な浮遊感と目眩に襲われ思わず瞼をとじる。
5秒ほどたった頃、それがなくなったので目を開けた。
目の前に通天閣が建ってるとか、いきなり大阪城があるとか思っていた。そんな俺の期待を三倉は見事に裏切ってくれた。
視界に入ってきたのはバットを持った高校生らしき人と俺の右下でボールと一緒に倒れている三倉の姿。
「へ……?」
おもわず目が点になってしまう。
俺だけじゃなくバットを持った高校生らしき人や、審判っぽい人も目を点にしてポカンと口をあけている。
「……はっ!」
なんとか正気に戻った俺は周りを見渡してみる。驚きからか視界がぼやけているが、なんとか電光掲示板や大勢の人は見えた。
ようやく俺はここが球場だと気がついた。
とりあえずどっかに行った方がよさそうだな。だんだん観衆の視線が痛くなってきてるし。
三倉の手にあった箱のボタンを慌てながらも押す。たちまち、目眩と浮遊感が起こり瞼を閉じる。
目を閉じる瞬間に真っ白な立方体が見えたような気がしたがそんなことを考える暇なんてない。
たぶん、周りの人から見たら、俺らが消えたように見えるんだろうな。
浮遊感と目眩が止み、目を開ける――と同時に起きていた三倉を殴って吹っ飛ばす。
「てめ―ふざけんなよ! なに変な所に飛ばしてくれてんだよ! 何であんな観衆のど真ん中なんだよ!」
「文句言うなよ! ちゃんと大阪にはこれてるんだから!」
「ハア? じゃあれどこの球場だったんだよ!」
「大阪といえば甲子園だろーがっ!」
……これでようやくあんなとこに連れて行かれたかが分かった。
なるほど、確かに甲子園ならバットを持った人もいるだろうし、電光掲示板もある。
塞がらなかった開いた口からハァ、とため息をついて、
「なめとんかぁっ!!」
三倉を思いっきり殴る。
「痛えな! なんなんだよ!」
「甲子園があるのは大阪じゃなくて兵庫だろうが!」
「え? そうなの?」
「そうなんだよ! こんなんのび○君でもわかるぞ!」
「のび○君と一緒にすんじゃねーよ!」
ハァ、とまた思わずため息が出てしまう。
呆れすぎてこいつに怒っている自分にまで呆れてしまった。
「一緒にしてねーよ」
「それならいいが」
「――オマエはのび○君以上のバカだ」
「人生最後の月旅行楽しんでくるかコラァ!」
「月じゃなくて早く大阪行こうぜ。腹減った」
ボタンを押そうとした三倉から余裕で箱を奪い取る。気が付いたらもう昼前だった。
なるほど、道理で腹が減るわけだ。
「チッ! まあいい。じゃあ行くぞ!」
自分でミスったくせに何でキレ気味なんだよ。
我ながら適格だと思うツッコミを心の中でしながら、今度こそ目の前に通天閣がある! そう思い、強く目を閉じた。
で恒例の浮遊感&目眩が来て、5秒位でやむ。
これで違うところに着いたらジャンプの角の角で殴ろう。
「ついたぞ~」
声に反応した俺は期待したままゆっくりと目を開けた