問題提起(プロローグ)
第一印象について考えたことはあるか。
そう聞かれればたいていの人はあると答えるだろう。
いや、無い人なんていないんじゃないかな。
表面だけを汲み取って頭に残す。
これが第一印象というものだろうと私は思う。
たとえばこの部屋。
小奇麗に整った部屋。
それがこの部屋を見て思った私の「第一印象」だ
本当はあちこちに傷が走っているがカーペットや絵で隠されている。
それに気づいてももう変えられない。
そんなもんだ。印象なんて。
それじゃあ次は人に置き換えよう。
髪は肩までで整えられていて、キリッとした目。眉もいじってない。服も調った男の人だ。
こんな人の第一印象は「誠実」とか「真面目」だろう。
違った? そんな奴はバカかよほど疑り深いかだろう。
私たちはそんなもので人の価値を決める。
だれだってそうだ。
そうしないと生きていけない。
たとえやりたくなくたって、やってしまう。
あまりにも理不尽だ。
見た目だけですべてを決めてしまう。
本当に、私たちは最低だ。
「そんなのいやだ」って? 我が儘だな。
でも、それも面白い。
じゃあ、そんな君に課題を挙げよう。
次の人がどんな人か当ててみて。
部屋の中を見てごらん。
「フンフンフフッフフ~ン♪」
何か良いことでもあったのか、黒いマントにジーパンという全く合わない格好をした『彼』は楽しげに鼻歌をうたっている。
それとは対照的に『彼』を囲んでいる十人余りの男達は、それぞれがナイフやスタンガンなどの武器を持ち、殺気立っている。
「殺れ」
男達の中の誰かが静かに言った。
――刹那、男達が中心にいた『彼』に向かっていった。
『彼』は最初にナイフを持ってきた男の鳩尾を持っていた杖で的確に突き、次に来た男を回し蹴りで吹き飛ばす。三人目の男は容赦なく杖で首を突いて骨をへし折り、それを見て怯んでいた男達を杖を横にふり薙ぎ払う。
十秒にも満たないことの出来事だった。たったそれだけの時間でほとんどの男は戦意を失っていた。
「こんの、化け物がぁぁぁぁ!」
男達の中の一人が『彼』めがけて弾を乱射する。
激しい銃声と金属音が部屋中に響き渡る。
弾は『彼』の全身にに命中した。
それでも『彼』は鼻歌を歌ったまま杖で床を軽くコツンと叩く。
その瞬間、向かっていった男達が跡形もなく消えた。
部屋の中にはドアと窓、そして『彼』だけになっていた。
『彼』が杖で軽く床を叩くと彼の姿が消え、誰もいなくなった部屋にドサッという音とした。
そこには消えたはずの男達が横たわっていた。
『彼』は薄暗い路地から、外を見てにやりと笑い
「五十名様ご案内♪」
そう言って真っ白な立方体を取りだした。
さあ、この人たちはどうだったかな?
いい人かな? 悪い人かな?
当たってるかはお楽しみだ。
1人でもいいから考えてごらん。
そうすると、新しくなれる。進化できる。
私は、そうだな、あの子。のんきなあの子にしようかな。
まあ、がんばってくれよ。