国際猫救助協会の猫の恋の話
こんにちは、皆さん。
私は猫。どこにでもいる猫さんです。
えっ? 名前? さあ、ずーと猫さんと呼ばれてるよ? それはおかしい? んー、そうかな。自分では違和感がないんだけど。
さて、今日のお話は私のお話にしようと思ってます。
つまらない? さあ、それはどうかな。読んだらわかるかもね。
あのね、猫の間で、たまに噂が広がるんだよ。
人間の王国があるんだけど、その国のお姫様は悪い魔法使いに呪いをかけられたんだって。どんな姿になったと思う?
なんと! 私達と同じ猫にされたのさ。でもそれが美しいのなんのって! 美しいのさ。
まるで宝石だね。
えっ? 話は終わりかって? まさか! これからが面白いのさ。
国際猫救助協会。
それは猫達が困った者達を助けるために作り上げた猫の協会。暇な飼い猫や、情報網の広い野良猫まで、メンバーは幅広い。私の仲間が助けた方は数知れず。
「で私は、そのお姫様を助ける勇者を見つけるの?」
聞いた私に、受付をしている猫が頷いた。
「でもその前に、貴方に相応しい名前を付けましょうよ」
受付は私に名前を要求した。それは想定外! 私は猫、なのに必要か?
「そうですね〜、私の毛は雪のように白いから、シロはどう?」
「ありがちすぎます」
即答で却下。案外と難しい。
「じゃあ、そうだな〜、スノウは?」
「もう一声」
「………ホワイトスノウ」
「ブルースノウはいかがです? 貴方の瞳は空のように青いから」
受付が言うので、何だかその気になった。
「わかったよ、ブルースノウ、それが私の名前ね」
こうして私、ブルースノウという名前がつきました。
えっ? そんなのはどうでもいいから、早く話を進めろって? はいはい、せっかちだな、君は。メインディッシュはゆっくりと食べる物だよ。
「ブルースノウ、では行って下さい、勇者の元へ」
「それは誰だい?」
「さあ、貴方が探すんですから、私は知りません」
「えっ? 丸投げするのかい?」
「私はしがない受付ですから〜」
受付のあまりの言葉に、私は言葉も出なかったよ。受付恐るべしだね。
「勇者は猫の言葉が分かるらしいです、あと黒のブーツを履いてるとか、マントが赤いとか、緑色の目に髪が長いらしいとか、とりあえず情報は以上です、では健闘を祈りますよ、ブルースノウ」
実は知ってるのでは?
思わず思ったけど、私は何も言わなかった。既にこの手の嫌がらせには、慣れすぎていたからね。
「さて、そう簡単に勇者がいるわけないし〜」
「おっ、猫じゃん、綺麗な白猫、今日はついてるな〜」
どうやら人間がいたらしいが、私は気にしないで一人でぶつぶつ呟いていたんだ。
「赤いマントに……」
「俺は派手だからやだけどね」
「黒のブーツに……」
「これは譲れないよ! 男のロマンさ」
「緑色の目で……」
「うん、母親譲りの綺麗な目さ」
「髪が長くて……」
「長いと大変だよ〜、切りたいけど切ると怒るし」
何だかわからないけど、先程から間違ってなければ、私、ブルースノウの独り言に、返事が返ってくる。まさか!
「貴方が勇者!?」
「えっと……猫が話していて、僕に勇者と聞いてくると言うことは、僕は勇者なのかな?」
あっさり見つかった! やった、私の指令は第一段階をクリアした。
「君、名前は?」
「ブルースノウ、貴方は?」
「僕は名前が長いから、グレンでいいよ」
うん、中々の好青年。私も彼なら悪い魔法使いを倒してくれそうと思えた。
「グレン、姫様を助けるために、悪い魔法使いを倒して!」
「おっ、面白そうだな、その話、乗った!」
こうして私、ブルースノウとグレンの旅が始まったんだ。凄いだろう?
勇者と出会って……えっ? 早く次の話を? まったく君は、最後まで聞いておくれよ、頼むから。
こうして私とグレンは、魔女の住む霧の森へ来たんだ。ところがここに来て、私とグレンはビックリする事になった。
「ねぇ、ブルースノウ」
「はい、グレン」
「魔女の住む霧の森だよね?」
「はい、魔女の住む霧の森ですよ」
「………………僕には普通の村にしか見えないんだけど、間違ってないよね?」
「ええ、私にもそう見えますよ」
「ならば、ここは間違ってないかい?」
「いいえ、ここですよ……あの家です」
「よくわかるな……ブルースノウ」
「はい、私、猫ですから」
「そうか……」
妙な間が空いたけど、私はそれどころではなかった。いつの間にか、近所のいたずらっ子達が集まってきて、私で遊び始めたんだ。もう大変だったよ、私は……。何が起きたか教えろって? 無理だよ、もう無我夢中だったしね。忌まわしい記憶は忘れるに限る。君もそうするといい。
さて続きだが、私は驚いたよ!
その家に入るなり、家のあちらこちらに、美しい少女の像やら絵画やらが、大量に飾ってあるのだ。異常だった。それは呪われた姫様の姿だったからだ。
「グレン、気味が悪いです、悪趣味です、えっとあとはあとは……」
「無理に探さなくてもいいよ、僕も同じ考えだから」
「はい……」
そうして、私達は魔法使いを探したんだ。ところがどこにもいないんだよ、これが。小さな家だから、すぐに探し終わってしまったんだ。
「もしかして隠し扉があるのかも」
今度はグレンの助言もあって、隠し扉を探した。そうしたら、本当に見つけたんだ。地下へ続くその階段を。
下から不気味な笑い声が聞こえてきていて、私は本当に帰りたかった。
「こらっ! てめぇ、何してやがる!!」
グレンが蹴り込んで入ると、何故かグレンが固まった。
「えっ!!??」
それは、オタクらしき人で、その手には美しい剣の先のような水晶が握られていた。
「お前かぁぁぁぁぁーーーーーーーーー!!」
「ひぃ〜! ごめんなさい、ごめんなさい………呪いはすぐに解きますから、お命だけはお助けを……」
随分、ひ弱な魔法使いだ。まったくこんな奴の所為で、姫様は大変な目にあったのか。少しは恐い目にあってもらおう。
「にゃー!」
顔をこれでもかと引っ掻いてやった。うん、随分、すっきりしたよ。あの時はね。悪者、許すまじ! だよ。君もやってみるといい。
「では……呪いを解きます…」
水晶が何と摩訶不思議な事に、割れたんだ。私の目の前で! あれほど綺麗に割れたのは初めてみた。
「これで姫様は、元に戻ります」
「ほう、案外と簡単だな〜………ブルースノウ!」
急に名前を呼ばれて、私はビックリしたよ。何故なら私の体が、すぅと消えていくんだから。
「まさか、お前!」
「ふふふ……お城で逢いましょう、グレン皇子」
「ブルースノウ!」
彼が手を伸ばしたんだけど、私には届かなかったんだ。
それからすぐに、姫様は呪いが解けて日々、元気に暮らしている。
「姫様……グレン皇子がいらしております」
「お通しして」
手に持っていた本をおいて、私はグレン皇子に向き直った。
「お久し振り、グレン皇子」
「ああ、お久し振り、ブルースノウ、いやーーーーリベラル姫」
そう、私は呪いを受けて猫になっていた、この国のお姫様。彼のお陰で、私は元の姿に戻れた。
国際猫救助協会、そこはいつでも猫が助けてくれる場所。そして弱い者や困った者を助けてくれる場所なのだ。
どうぞ当協会に御用がありましたら、猫を通してお知らせ下さい。どなたでも、お待ちしております。あくまで、猫にですがね。
終わり〜
どうも、秋月です。
国際猫救助協会、いかがでしたでしょうか?
え? 勇者しょぼい? それは秋月ですから(笑)
初の短編なので、軽い話に……なってませんね;;
すいませんm(__)m
誤字脱字がありましたら、感想にてお知らせ下さいませ。
作者、感想は甘口が大歓迎です。
ではでは、本作品を読んで下さりありがとうございました。