気づかないふり
変わらないものは、何だろう?
変わるものは、何だろう?
彼は、泣いていた私にそっとハンカチを差し出した。
「何?」
彼の優しさは十分理解しているのに、悪態をつく自分が嫌になる。擦りすぎて真っ赤になった私の瞳をみて彼は、苦笑する。
「何なの?泣いている私が珍しい?」
少女は、ムッとした表情で彼に問う。
彼は、困ったように笑うとちゃかす様に「別に、うさぎみたいだと思っただけ」と言う。
「何があったか聞かないの?」
少女の言葉に彼は少し動揺してから、大きな手で私の頭を撫でた。
それはとても乱暴で、まるで犬を撫でる様な手つき。しかし、その中に暖かさを含んでいて、一瞬ドキッとした。
「聞かれたく無いことは、聞かない。だってお前はいつも、言いたいことはすぐに言うだろう?だから。」
そう言うと、少年はにかっと笑った。
私達が小さかった頃は、嫌なことも嬉しいことも何もかも彼は知りたがっていた。
でも、今では、私が落ち着いて私から話すのを待っていてくれる。
「ありがとう。」
少女がふわりと笑うと、少年は照れ臭そうに頭をかく。
変わらないものは、いつも、私といてくれること。
変わったのは…
何だろう?