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「哀れだな」
「なっ、私が何を知らないっていうの?!あなたこそ知らないんじゃなくて?私は貴族なのよ、平民のあなたが不敬を働けば罰することもできるわ!」
男はため息をつき、やれやれという仕草をした。
「せいぜいお父様が迎えに来るまでおとなしくしてろよ」
男はそういうとパトリシアを背にしてエミリーに向きなおり、
「お前にはやってもらうことがある。ついてこい」
エミリーの足首に巻かれた縄を切って立たせ、2人はパトリシアを残し出て行ってしまった。
「なんですって!?ちょっと待ちなさいよ!言うだけ言って立ち去るなんて許さないわよー!!」
パトリシアの叫びは小屋に寂しく響いた。
はぁ、とため息をつく。
これで何回目だろうか。一人になり、怒りが収まると溜息が止まらなかった。
理由は先ほど大口を叩いてしまったと後悔していたから。
勢いでお父様をおとなしく待つなどと言ったが、パトリシアと父親は不仲だ。
いや、不仲というよりは父親の方がパトリシアを避けている。