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いつもこの侍女はのんびりとしていた。
言葉が田舎訛りでさえない眼鏡顔に三つ編みを垂らし、マイペース。そういうところがパトリシアの癇にさわる。
対するパトリシアは母譲りの金髪に蒼い眼。15歳だが大人びているせいか、可憐な美しさで他の貴族令嬢の中でも劣らず輝いていた。
「あ、そういえば馬車が襲われたんだっけか。たいへんだ~わたすたち誘拐されてしまったんだかね~?」
「なんですって!?」
そういえば、今日は街へ出かけたのだった。
帽子や服を注文して、おいしいと評判のスイーツ屋によって馬車に乗り、心身ともに満足したせいか帰る途中でパトリシアは寝てしまったらしく、気づいたらこの状況。
「全然気付かなかったわ。寝ていたのね私」
「んだ。馬車が止まったと思ったら、いぎなり黒い布で顔隠した輩が押し入ってきて、ハンカチを口にあてられて…そこから記憶がねぇだよ」
「そう…というかあなた。訛りすぎよ、気をつけなさいな」
「す、すみません。お嬢様」
驚いたり興奮すると訛りが強くでる。あまりに訛られると令嬢付きの侍女として品位が問われる為、日ごろから気をつけるよう言っていた。
こんな時に品位も何もないのだが。
「まぁ、いいわ。それより、これからどうしようかしら」
「どうしましょう?私もお嬢様も動けないですし」
手足を縛られてしまっては動けないし、逃げようがない。
こうなったら取るべき行動は一つ。
「助けて!誰か!」
大声で叫ぶ。
「誰かいないの!?」
自分がなぜこのような目に合わなくてはいけないのか、恐怖と怒りが込み上げる。
「私をこんな目に合わせて、ただじゃおかないから!」
せいいっぱいの声で叫んだとき、