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 本当にキスされるかと思った…。もう訳が分からないわ!

パトリシアは心の中で叫ぶだけで、声に出しては言えないでいた。

先程エリックにいきなり引き寄せられて驚いたのと、何か言い返したら口を塞がれるのではと警戒しているからだ。

あとで問い詰めてやらなきゃ気がすまないわ。

納得がいかず腹を立てていると、手を引かれいつの間にか山の中を歩いていた。

辺りは暗い。つい先程いた小屋とは違い先には闇が広がり、細い山道には草木が生茂っている。

フクロウが恐ろしげな声で鳴いて、パトリシアは思わず足がすくむ。

それをエリックに知られたくなくて誤魔化そうとして言った。

「手を離して」

「痛いか?」

前を行く背中がちらと振り返る。

「痛くないけど、いいから離してちょうだい」

「…まだ駄目だ。もう少し我慢してくれ」

エリックが何を考えているのか分からない。手を引くのは逃げられない為だろうか。

その心配なら必要ないのに。

「私が逃げられないようにしているの?それなら大丈夫よ。大人しく迎えを待つって言ったじゃない」

すると落ち着かなそうに辺りを確認してからエリックが口を開く。

「そういうことじゃない」

「じゃあどうしてなの?」

エリックは、何でこのお嬢様は大人しくできないんだと呟いてから本当のことを打ち明けた。


「パトリシア。あんたはどうやら命を狙われているみたいだ」

エリックは結局パトリシアを助けることを選択した。

明かりが欲しいというパトリシアを無視したのは、外を歩く姿を見られたら侍女達に不審に思われるからだ。

彼女を引き寄せたときも声を荒げた彼女を黙らせる為に必死だったし、小屋を出たことをあの侍女たちに見つからないようにとかなり焦っていたのだ。

そんな苦労も知らないパトリシアは、エリックの言葉を信じなかった。

「まさか!冗談はよしてよ。私を殺してしまったら身代金と交換できないじゃない」

確かに彼女の言うことは正論だ。

しかしエリックははっきりと彼女を殺す計画を聞いてしまった。そのことをどうにか分かってもらおうとするが、彼女は聞く耳を持たない。

「そう、わかったわ。でも例えそうだったとしてもあなたは信用できない。だって誘拐犯ですもの」

パトリシアは悲しげな表情でエリックに言う。

「クレイトン家の侍女が誘拐犯の仲間で、私を殺そうとしているだなんてありえないわ!」

あの、いつもマイペーでぼんやりとした侍女が誘拐なんてできる訳がない。それにエミリーは3年もクレイトン家で働いていて、おかしな素振りは一度も見たことがない。失敗は多いがまじめに働いているのだ。

そんなことを言うエリックの顔を見たくない、そう思うとパトリシアは山道を走り出してしまっていた。





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