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「えっ、家に帰れるの?」
嬉しそうな笑顔を浮かべ、エリックに詰め寄る。
「ま、そうだな。あんたが大人しくしてたらちゃんと帰れるだろうよ」
良かった。お父様が迎えに来てくれるのね!
パトリシアは自身が見捨てられなかった事に安堵と喜びを感じた。そして家に帰れることで不安が払拭されたようで、彼女の目にはいきいきと輝きが戻っている。
そんなパトリシアの様子を見て、エリックは複雑な気持ちになった。彼女の喜ぶ姿が嬉しい反面、これから彼女を落胆させてしまう事を考えると辛かった。
「その前に何も食べてないだろ?これしかないけど、食べないよりはきっとマシだと思う」
そう言ってエリックはポケットからビスケット出した。
そのビスケットをじっと見つめて、
「何か入ってないでしょうね?」
確かにお腹は空いているけど、あやしいものに手を出す気にはなれない。先ほどまで眠らされていたのだから、余計だった。
「安心しろ、何も入っていやしないさ、ほら」
と言ってエリックは一枚自分の口に放り込んだ。
「なら食べてあげるわ」
「はいよ。まったく生意気だなぁ」