第一話 転生
僕はハヤト。上村颯人だ。まぁ、どこにでもいるような、何も取り柄のない、ただの人。日がな一日パソコンに張り付いて、社内システムを調整したりしている。
ある日、通勤に使っていた電車が遅れて、焦っていた時のこと。ちょっと見通しの悪い交差点で、信号無視のトラックに、盛大に撥ね飛ばされた。信号無視、速度超過、前方不注意、そして、僕の唯一の強みである、常人離れした動体視力によると、あれは居眠りも入っていたな。
「しまった。会社に連絡入れないと…。あと、僕の友達にもメール入れとかないとな…っあ、もう死んでんだったか。」
それどころではないはずだが。結構な距離を飛ばされながら、結局、頭では分かってても、心が理解できていなかった、唯一の友達の死についてを、考えていた。
…………………
「目が覚めたかい?」
「うわっ、変な民族衣装のやつおる!?お前誰や。」
東京に来てから、ずっと封印(しようとしていて、時々変な発音になったりしていた。結局最後まで抜けなかった)関西弁が出てしまった。ええか、もう。少なくともこいつ以外聞いてなさそうやし。
「私は、神。」
「あー、ハイハイ。オーケー、胡散臭いやつな。」
「………。」
「で、なんて言おうとしてたん?」
「…貴方は、異世界転生プログラムに、当選しました。」
「オーケー。今度は詐欺メールな。スパムボックスにほかしとこか。」
「…本当の話です。」
「…あー、なんか願いでも聞いてくれんの?、どっかの異世界転生モンのラノベっぽくチートでもくれるん?」
「チート、はちょっと難しいですが、ある程度のご要望なら聞けますよ?」
こいつ、ちょっと言葉遣い崩れてきたな。まあ、ちょっと言ってみるか。
「じゃあ、結衣って知ってる?相原結衣。」
「こちらでは判断しかねますので、記憶を覗いても宜しいでしょうか。」
おぉっ!神様っぽい!
「ええよ。」
………………
「ふむ、相原結衣さんですか…。この人なら、『ローク』にいますね。」
「…はぁっ?結衣はもう死んでるんやけど。」
「『ローク』に行きますか?」
聞いてたんかワレ。
「ようわからんからええわ。」
「承知しました。上村颯人さん、貴方は、これから、ノール・ヴェン・ルーノスとして、ルーノス家の六男として産まれます。」
「はぁ?ちょっ…」
ちょっと待てい!「ええわ」言うとんねん。戻せや。
そう言おうとした時には、既に意識は闇の中だった。
…って、あいつ、
「全部馬鹿正直に答えやがって!ノリが分からんのかノリが!」
と、自分以外にわかる人のいない「ノリ」をわかってもらえないことに、理不尽に怒鳴ってみた。…なんか虚しくなってきたからやめた。




