思案
どんな力でも、力である限り、制約が伴う
「Then, let's go back to Earth together.(じゃあ、一緒に地球に帰ろうよ。)」
影は私に話しかけた。影の正体は一人の少女だった。コバルトブルーのような色をした長い髪は水で濡れ光沢を帯びていた。白いワンピースを着ていた。少女と言っても寿命が大幅に伸びた今、彼女を少女といっていいのかはわからない。
ただ、心を見透かされるような感覚に陥ったのはなぜだろうか。私は地球で見た景色のことなんて一つも口にしていない。はずだ。
「わたしも虹が見てみたい。」
英語を話したはずの少女はきれいな発音で日本語を話した。
「君は何なんだい?」
問いかけに対して少女は顔に微笑を見せながら
「何だったらいい?教えてよ、ジョン。」
予想外の答えが返ってきた。名前も知られている。からかうようにそう言われた。
「なぜ私の考えていることが分かったんだい?それに、名前も、、」
私は続ける。しかし、少女は突然後ろを振り向いて走り出した。振り向く際も、微笑を顔に作っていたのが
印象的だった。
私は手を引かれたわけでもないのに、少女の後を追った。
彼女の走る道とその周りの街は私の知らない場所だらけだった。宇宙居住施設といえども、人が大勢住む場所であり、凄まじい広さで私の知らない場所があるのも当然だ。前を走る少女は裸足で、アスファルトを走るとぺちぺちと音がなった。少し走ると少女は大きな倉庫の一つの扉に入っていく。もう周りに人影はほとんどなく、
私は何も気にせず扉の向こう側へと入っていった。倉庫の中は陽の光に包まれたような場所だった。
そこには、古びた人型の機械の巨人がいた。上を見上げないと顔は見えないくらいの大きさだった。私はその機械仕掛けの巨人を前にして沈黙する。足元には少女の姿があった。彼女は私に気付いたような素振りを見せるとこちらに向かって話し出した。
「わたしは、イリス。生きるものすべてのこころがよめる、魔法使い。」
心が読める、そう聞いて先程の手品のトリックが分かった気になった。(信じ切った訳では無いが)
少女は続けて
「あなたには、わたしとデウスを地球に連れて行ってほしいの。」
デウスとはこの巨人のことだろうか、それにしてもたくさんのことが一度に起こりすぎている。私は彼女に
説明を求めようとした
「待ってくれ、聞きたいことがたくさんありすぎる。少し私の質問に、、」
その時、イリスと名乗る少女は話を遮り、
「デウスは、わたしの友人。兄弟と言ってもいい。」
倉庫の中は静まり返る。と思えば、少し色が少ない倉庫の中に一つ色が加わる。
巨人の目に、紺碧のような光が灯る。
「「生きる場所を選ぶのは君だ」そうデウスは言っています。」
私は一気に少女の話しに惹き込まれる。
「人は、たくさんの約束でできています。わたしと、一つ大きな約束をしませんか。」
少女は小指を出して
「わたしとデウスを地球へ連れて行ってくれませんか。」
その言葉を発したとき、少女とは思えない程に言葉に重みを感じた。実際、少女ではないかもしれないが。
この子の言うことなら。私も小指を出し、イリスの小指と結ぶ。指切りげんまん。
「そしたら、三人で虹を見ましょう、夕焼けを背にした、きれいな虹を。わたしも約束します。」
彼女は少女と呼ぶには大人すぎる。いりす。イリス。虹の女神。イリス。
巨人は気付けば眠っていた。
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