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全体前へ進め  作者: サンダー


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告白

駿河信夫准尉は今年の三月一日を持って自衛隊を退官した。ひたむきに職務を遂行し、いかなる場面においても誠実であった。しかし一つだけ後悔があるとしたら一九八〇年のあの日だ。あの忌まわしい記憶が今も彼を苦しめている。その記憶を頼りに、この小説を書いた。それが事実か事実でないかと言われれば自分中心の主観であるため、なんとも言えない。しかしあの日警衛の任務に就いていなければこんな事にはならなかったはずである。恨みと憎しみが交差して駿河の内面はボロボロになっていた。そして退官した足で、札幌駅に向かい、特急北斗で函館を目指した。函館から青森までフェリーを使い、その日は盛岡迄行き一泊した。飛行機を使わず陸と海を使ったのには理由がある。そう、バタフライナイフを持っていたからだ。このナイフを昨日家の近くの量販店で購入した。レジを通る時は何故かドキドキしたが、心と体が一致していないようにも感じた。盛岡の夜を堪能しようと、駅近くの焼き肉店で、酒と料理を楽しんだ。酒はあまり強い方ではなかったが、その日は人生で一番美味しく酒を飲むことが出来た。焼き肉はつまむ程度にしか食べられなかったが、評判通りの味だった。

次の日の朝、皇居を目指し新幹線で東京へ向かった。今日は念願だった皇居へ行き、観光を楽しみたい。しかも飛び切りのショーをしようと思っている。サプライズだ。ジャケットの内側にバタフライナイフを忍ばせてある。駿河が此処を死に場所として選んだのには訳がある。父が東西戦争で父が亡くなり、自分は貧窮の中生きてきた。その悲惨な死にざまを天皇、皇后両陛下に見届けてもらいたいという一心からだった。また現在の皇軍の在り方を疑問に思うことも正直、しばしばあった。もう十分やり切った。もう疲れたのだ・・・。新幹線の外を眺める。岩手県の田園風景が気持ち良かった。こんな場所で生きていたら、自分も何か違った人間になっていたかもしれない。そう思いながら東の空を眺めていた。田所待っていろよ。もうすぐそちらへ行くからな・・・。


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