ギャオ⇋トラフ そしてダンジョン
エピソード Value=“0”
それは国外の観光客の眼の前でおきた。
北米プレートとユーラシアプレートの湧き出しからできた地溝を見るために極東からやってきた二人の観光客だった。
あまり寒いのは嫌だと寒気の強まる時期を避け9月下旬、ギャオ近くのコテージを借りオーロラとの遭遇も視野に入れていた期待の夜ふかしの延長な薄暗い早朝、弱い虫の知らせに似た感覚・・・“ちょっと気になるから”でその方向へ足を進めると地鳴りとは違った振動が脚裏から伝わる感じが強くなっていく。これは物理でなく心へなのかもしれないが。
その地にできたさして大きくも小さくもない亀裂は昨日姉弟で散策したときには見つけられなかった。新たな間欠泉の可能性も捨てきれずリスクを避け最接近は躊躇ったが魂のストッパーがかかるギリ危険のなさそうな距離まで近づく。
───グワン
鼻先をかすめるような錯覚を覚えたが数メートル先に無骨で大振りなハンマーが飛び出して中空に留まっている。いや留まっているように見えたのはハンマーに纏わりつく紐状の鎖から逃れられないようだ。手の届く高さでもなく足場も悪くカチャカチャと身動ぎするのを動画と静止画に収めたあと……報連相。
現地機関の聞き取りから開放されて姉弟は帰国した。
エピソード Value=“0.1”
観光客からの連絡を受けて現場へ行くと耳にした通りの光景があった。
空中でもがき苦しむハンマーを回収しようと足場を組もうとすれば地面が泥濘役目を果たせない。アームの長い重機を近づけようとすれば底の深い沼となる。
ならば空中からと準備をすすめている最中どこからか駆除し尽くしたはずのオオカミの遠吠えがして上から叩きつけるかのように地中へと引き込まれていき跡には肉球に見えるくぼみが残った。
エピソード Value=“0.2”
初詣に龍蛇神を祀る神社にお参りをして自宅のこたつでまるくなる。ぼーっと去年の写真を次々と眺めていて不思議体験の一枚を見ながら「あっ鎖じゃなくてヘビにも見えちゃうなぁ」と呟いた。
エピソード Value=“1”
突然なのか予測されていたことが起きただけなのか判断は人と立場で異なるのかもしれない。
今日【南海トラフ地震】は起きるべくして起きた。
未曽有の災害だとしか表現できない。
しかし被害もさることながら対応に困った想像すらしていなかった異変だ。
被災により生命を失った者、住むところを失った者、日常の営みが歪んだ。
周辺自治体からの支援、ボランティアの助力など少ないとは言えない援助を受けてもまだ十分とは言えない。
復興には数年、いや規模と広い範囲だから十年単位は必要だろうか。
広域支援センターへ〝◯くしまダンジョン運営〟を名乗る団体から“微力ながら協力するぜ”の連絡が入った。
エピソード Value=“1.1”
仮設住宅など箱物の支援を受けたい自治体は被災地の集団避難所になっている駐車場から六畳程を一定期間貸し出すことで◯くしまダンジョンの地上出入り口を設置して地下を生活圏とした。
内部には仮設とは思えないインフラも整備されたモデル住宅ぽいのや団地型の住居が用意され、大手キャリアーのサービスはもとより学校、病院、診療所、公園、カルチャーセンターなども備えられている。
不思議なことに〝地上〟と〝◯くしまダンジョン〟では容姿、風貌が変わる物が少なくない。変わった者の多くは獣人だがドワーフ、ゴブリン、リザードマンもいる。
誰が調べたのか“源平藤橘菅”の嫡流に強く現れたのが“馬鹿鳥犬牛”だ。
後になって運営は『ダンジョン内は神域に似た空間で連綿と受け継がれた血筋に応じた変化かもしれない』と。
以前から◯くしまダンジョンのサービスを受け設定でメインのアバターを決めているとその姿となった。『やりやがったなぁー~』
エピソード Value=“1.2”
生後間もなく赤ちゃんポストに預けられた少女は後ろを振り返り高校を卒業するまでお世話になった施設を見上げてから敷地から出ていった。
蓄えもないけど就職でなくて学生寮のある大学へ返済義務のない奨学金で通う。後はバイトで補うぞと。
名前は『慈縁椎 えま』、赤ちゃんポストにメモが添えられ『慈縁椎 閻魔』と書かれていたらしい。確かに“閻魔”はないわ。最近の役所はキラキラを弾くんだってね。
先日下見に通ったルートをなぞってるだけでこれっぽっちも不安材料はない。いずれと心づもりもしていたし断捨離もして小さく纏めたけど生活必需品を目一杯詰め込んだキャリーバッグがだんだん重たくなってきただけだ。
どっかで休もう。
ふぅーと息を吐き空を見上げた。泪が出てきた。
本日は快晴なり、花粉も黄砂もビシバシ飛んでやがることでしょうよ。くそがっ。
悪態をついて道端の出っ張りに腰を下ろしかけたら地面が揺れた。
「えっ」
“えま”の詳しい設定を省いてます。
・設備とか快適さでいうとコテージ⇛ロッジ⇛バンガロー
・ドワーフ化の場合:物部の末裔
・ゴブリン化の場合:縄文人・蝦夷のDNAを多く持つ。大和朝廷からは〝土蜘蛛〟とも呼ばれていた容姿から堀深いソース顔に細長い手足、絶対的な栄養不足で身長は低い
・リザードマンの場合:多くは太平洋側で南方からの海洋渡来で龍蛇神・海蛇を崇めていた。出雲・諏訪など日本海側のルーツも含む
・巨人族(?)でヴァン神族ロキはアース神族オーディンの義兄弟ってさ…