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書いてる途中で飽きたやつ  作者: 七宝


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横向きの縦(2026)

 ある朝、シンゾーが目を覚ますと部屋が90度傾いていた。


 いや、正確には部屋は変わっていない。床も机も本棚も、昨日と同じ位置に、昨日と同じ角度で存在している。

 シンゾーは今、「壁」に寝転がっている。壁にもたれかかっているような体勢で、確実に背面に重力を感じながら、寝転んでいる。90度傾いていたのはシンゾーのほうだったのだ。


「やっば」


 シンゾーは焦りを見せた。


「もう8時やん」


 今日、彼には約束があるのだ。駅前の(いぬ)屋の裏の蔵の流しそうめん用具一式置き場から119歩西へ歩いた地点に、9時に集合するという約束が。


「グォッ(『ゴッ』と全く同じ発音)」


 独特な掛け声で立ち上がり、(元)床に手をつく。


「こりゃ目が回るっちゃ」


 普通に壁を歩けば転んだりはしないはずだが、脳がそれを理解していないせいで転びそうになるのだ。


「そーっと、そーっと」


 窓は落とし穴、カレンダーは足を滑らせるかもしれない。初めての危険の種類に四苦八苦するシンゾー。


「そーっと、そーグホァ!」


 細心の注意を払っていたにもかかわらず、シンゾーは落とし穴にハマってしまった。窓ガラスではなく、壁の薄くなっている部分だった。


「そうだよな⋯⋯普通は壁に体重かけないもんな⋯⋯」


 壁に穴が空いたショックを受けながら、室内に登ろうと体を動かすシンゾー。下半身が真冬の朝風に晒されており、めちゃ寒いのだ。


 それから全力で支度を済ませ、9時ピッタリに集合地点に着いた。塀を119歩歩いてたどり着いたのだ。


「キミがシンゾー君?」


 彼に声をかけたのは、推定27歳3ヶ月〜3ヶ月4日の、ナイスバディでオーラのある峰不二子似のスキンヘッドのピアスだらけの女性だった。


「人に名前を聞く時はまず自分から名乗るものですよ」


「あたし、ホタテ」


「ホタテさん!?」


しかしその「床」は、今や男にとって「壁」なのだ。

天井は床になり、壁は天井になり、窓は床の真横にぽっかりと開いた穴になっている。


男は這うようにして窓辺まで行き、外を見た。


街は普通だった。

人は普通に歩き、車は普通に走り、信号は赤→黄→青と変わっていく(?)。

世界は、男だけを除いて、まっすぐ立っていた。


「私は横にいるのに、世界は縦だ」


そのとき初めて男は、自分の「縦」が、世界の「縦」と一致していないという事実に気づいた。

これまでずっと、自分が世界と同じ方向を向いていると思い込んでいただけだった。


男は試しに、両手で床をつかんで身体を反転させようとした。

すると一瞬、視界がぐるりと回り——

今度は天井が床になり、床が天井になり、窓がまた床の真上に来た。


でも男の身体は、まだ横のままだった。


どれだけ回転しても、どれだけ這い回っても、

男の内側にある「縦」は、世界の「縦」と平行になることはなかった。


ただ一度だけ、

男が完全に諦めて床に(あるいは壁に)大の字に倒れ込んだ瞬間、

ほんの一瞬だけ、

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