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9.

 だが。

 予算会議、当日。

 私は信じられない光景を前に、ただ呆然と立ち尽くしていた。

(――嘘……でしょう……?)

 棄権、ゼロ。

 反対、ゼロ。

 出席者の全員が、手をまっすぐ上にあげている。

 お気に入りの青い花柄のペンが、手から滑り落ちてかつんと軽い音を立てた。

 進行役の生徒会長がおもむろに口を開く。


「――では、賛成多数により、今回の予算案を可決いたします」



 ――ありえない、ありえない、ありえない……!

 会議が終わるや否や、私は早足で各部の部室をまわった。

 生徒会役員による根回しや交渉は、到底間に合わなかったはずだ。少なくとも、バスケ部に対する交渉はうまくいくわけがなかった。それでも、予算案を可決するだけの過半数の承認は確保しているから、反対する部が多少残っていても、議案は通る。

 私の狙いはそこだった。反対意見を無視された部――、特に、実績のある有力な部から不満が噴出するはずだと推測していたのだ。

 ――それなのに、フタを開けたら、全ての部が今回の提案に賛同していた。

 全員一致。そんなの、ありえない。

 うわべだけの賛成かと思った。しかし、会議後にどの部を尋ねても、会長への不満は感じとれなかった。それどころか、みな、良い結論を導き出したかのような、満足げな表情を浮かべている。

(何があったと言うの? 私が知らない間に、何が……?)

 おかしなことと言えば、もう一つ――。

 そこで、ぴたりと、足が止まった。

 私が巡回業務をしていた三日間。

 放課後はまっすぐ現地に向かい、生徒会室に寄る暇はなかった。 

(――そういうことか……!)

 私は愕然とし、進行方向を変えて足を速めた。

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