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8話 チンタマ


 保健室を出ると廊下を駆け走る女子たちが数人、風を切っていった。

 

 さっき部屋から出るときに時計見たけど、八時ちょいすぎだぞ。

 御目下との一件でにぎわってるなら分かるが、その割には俺の方にはわき目も振らず一方向に向かっているようだし……かといって男子はかったるそうに歩いていて、御目下どころか今日一日の授業すら興味がなさそうだ。


 異質なモノとして俺は学校という囲いに身を置いているが、俺自身の行為は、存在は何一つ影響を与えていないのか。


 俺の行いをほめたたえて寄り付く生徒も、悪徳だと責めたて取り押さえる者すらいない。

 つい数十分? か前に少女一人を襲っていた悪漢と戦っていた時には取り巻きが数人いたのに、人外が人外を吹っ飛ばし、その人外が隻腕のスキンヘッドになったというのに奇異なる存在に視線すら送らないほどの歪な無関心さ。

 

 それ自体は俺にとってありがたいことなのかもしれない。玷にとっても触れられたくない事件だったし、いたずらに盛り上げられても困るだけだ。


 が、この現実とたがわぬ異世界だと信じていた俺も、覚めているのに夢幻を見ているような世界観のズレに、だんだん気味悪く思えてきた。

 

「……報していない」


「え?」


 人間観察に夢中で、隣で肩を並べていた有がつぶやいたのを聞きもらした。


「悪い、なんて?」


 有は苛立ち、不愉快さに顔をゆがめることはなく俺の方へと体を向き直して正面から答える。


「原子とエネルギーで構成されるこの世界で『見えざる意思』に反応する粒子がある……すべて解明はされていないオカルトのたぐいだが、ワタシは『トリガー』の真価をキミを通して再確認したよ」


 彼は観察するように俺の頭部と左腕に視線を移しながら言葉を並べている。


「……『トリガー』に詳しいんだな」


 そうスマホをポケットから取り出して有に詰め寄る。


「ひょっとして俺の持ってるこのスマホ、おたくのなんじゃないのか」


 別に敵探しをしてまで戦いに飢えているわけじゃない。疑心にかられていると言われば否定はしないが。

 ネトリが不自然にだんまり決め込んでいる以上スマホが使えないんだ、いまやハンデしかない俺の身体で当たり構わず敵を増やすのは得策ではない。


 だからこそ単純な好奇心の目を向けて純粋な気持ちで問いかける。

 こんな独特なスマホの扱いに慣れてたし、管理者権限みたいなのでネトリを制御しているのだとしたなら、俺が異世界に来た本当の原因は……何かこの子にも関係あるのかもしれないからだ。


「どうなんだ」


 仮にそうだとしたなら、俺の持ってたスマホを返してもらいたいんだよなぁ。


「その情報は『必要』じゃない。『トリガー』の起源を知りたいんじゃないのか?」


 相変わらず、全く動じていない。眉すら動かさず固定させた表情のまま質問を返してくる。


 そのまま有は返事待たずして包帯の巻かれた左手を俺の目線の高さで止めて、とんぼを捕まえるように人差し指を俺に向けてクルクルと指をまわし始めた。


「ワタシがそのスマホの主か否か、キミのスマホが無事か否か、それは重要じゃない。キミにとっての『最重要』はカケルンのサポートであり『必要』なのは情報だ。意思エネルギーのルーツを探る、それが今のキミが優先すべき『目的』のはずだ」


「それは……」


 スマホ、なんで俺が失くしたって……。


 まぁ、現実に戻れるわけでも有が敵として俺を苦しめるわけでもないし、これ以上追及しても意味のないことか。ネトリの性格設定とかいじれたら今後の異世界ライフも楽しめそうなのに。


 俺の心情を察したように有は手を下ろして説明を再開させた。


「聞け、『対価』による願望の成就は狭間市では珍しくもない、ウワサとして有名なんだ。願えば失う、失っても願えば叶う。質量とエネルギーの関係のように有名な『法則』だ……身体、知識、技術に根差した潜在エネルギーが、もし強い『意思』によって引き上げられるとしたら、対する反動も相応に大きくなる──」


 なんだこの下り……物理学か宗教哲学? それとも魔法雑学か?

 

 ちょっとよく分かりません、という俺の呆けた顔に有は少し肩の力を抜いて駆けている女子生徒たちに目配せする。


「人の意思は常に『目的』にしばられ、『目的』に向かってエネルギーを消費させ生きている。目的ゴールを目指して走れば体力や精神力を消耗するように。モノを製作する時も同じ原理だ。それに意味があろうがなかろうが、大なり小なり生きとし生けるものには考えがあり、それを形にするため行動する。そのエネルギーの源を称するならば、『チンタマニウム』。『トリガー』によって質量を超えたエネルギーを引き出した結果、キミは相応の反動をくらったんだ」


「そういやネトリが……え、チン、なんだって?」


「『チンタマニウム』だ。サンスクリット語からの由来で、思考を成就させようとする力、見えざる意思の正体だ。以下『チンタマ』と略称する」


「略すなよ」


 ずいぶん真顔で小難しいこと言ってると聞いていれば、コイツ何を学校の廊下でとんでもないこと言ってるんだ。

 ふざけてるわけじゃないし、周りの学生も関心ないから平気でしゃべるんだろうけど。


「──はるか昔、人類誕生の歴史で諸説あるうちの一つだ。それはたったの一匹の精子が卵子に到達する確率と等しく、暗闇にただよう未成熟の地球に大型の隕石が追突した。その隕石に含まれていた未知なる粒子と地球のエネルギーが混ざり合い、『チンタマ』が生まれたとされている」


「う~む、壮大なのかそうでないのか……」


 内容に集中できないよコレ。

 しかし名称は置いておいても、分からないでもない。非現実的な境界線を越えてきた俺だから受け入れられるファンタジー理論だな。


「強大な『チンタマ』は、己の『チンタマ』を犠牲に無から創造するエネルギーを発し、周囲の弱き『チンタマ』を隷属れいぞくさせたり取り込んだりする性質をもつ。もちろん細胞の中にも『チンタマ』はあり、細胞の集合体である人類もその性質を持っている。その中でも優れた『チンタマ』を持つ『有力者』は空気や水だったり、近くの物質に含まれた『チンタマ』を意思によって駆使したり創りだすことができる」


「神話みたいな荒唐こうとう無けいさだけど……御目下みたいな有力者はチート野郎ってことは分かったよ」


 チンタマチンタマって俺のアタマん中がおかしくなりそうだ。

 

 なんとか必死に脳内処理をフル回転させて俺なりの答えを出すと、ようやく仏頂面だった有が笑顔を見せた。呆れたような笑い方だけど。

 

「キミもその『チート野郎』を体感しただろ? そのスマホには『高純度のチンタマ』がCPUに組み込まれている。『トリガー』アプリは試作の段階だが、命を落とさないよう『ネトリ』に制御させ、なおかつ有力者以上の『チンタマ』を使い手に呼応させ増幅できる装置なんだ」


「そ、そう……」


「問題は記憶や心を『対価』にした場合、大きく人間性に影響が出てしまうのが玉にきず。それは新しいスマホで記憶や心の保存ができるように改良していこう」


 ぐいぐいと本性を明らかにしたなオイ。試作? ネトリに制御させる? 改良だぁ?

 学生の身分でスマホを作り上げたなんて一言も言ってはないが、有のこの口ぶりはまるで技術者……『ネトリ』や『トリガー』の生みの親だって告げているようなもんだ。


 …………。

 ……。


 だからどうしたということもないか。

 俺の目的は玷を助けることだ、それ以外は気にする意味もない。


 俺が寝ている間に騒動を納めてくれたんだ、仮に黒幕であっても敵でなければいいさ。

 

 ネトリ……いや彼失くして俺は彼女のヒーローになれなかった、感謝しないと。

 特別な能力なんて俺にはなくとも、授けてくれたスマホさえ俺に使わせてくれるなら彼が悪魔だろうが神様だろうが構わない。


「俺に何をさせたい」


 彼は片方だけ口角を上げ、皮肉でもなんでもなく初めて純粋な喜びを俺に見せた。


「まずはリラックスしろ。それから、歩こうか『転校生』Yくん……カケルンが戻る前に純の元へ案内して紹介するよ」


 玷、戻ってくるのか?

 さっきもそう言って俺を保健室の外へ引っ張り出したような……。


「さあ、共に使命を果たしに行こうか」


 有は俺の肩を叩き、女子生徒たちが引き寄せられている元へと俺を誘導する。


 そうだ、逃げるだけのくだらない思考遊びは止めるって決めたろ。

 なすがままでもいい、前に進むんだ──。



 八話【チンタマ】



 有についていき階段を上ったところ、踊り場で女子高生の壁に阻まれた。

 それも横じゃない、縦長で百メートルはゆうに続いている列だ。


 どうも有の話では教室にまで続いているらしいが、なんでこんな暑苦しくてたまらない日に、夢の国のアトラクションみたいな行列に並ぶのさ。

 端から端までワイドな窓ガラスからはまんべんなく日光が降り注いできてるし、長時間ここにいたくないんだけど。


「ウグわ! ワギャオ!」


 で、俺たちの目の前で吠えているこの三つ編み娘はなんだ。

 背丈はだいぶちっこいが、はだけたワイシャツからのぞかせるへそや肩回りからは色っぽさというよりもしなやかに鍛えられた無駄のない肉体が俺の視界に入ってくる。

 

 しかもシャツの袖を肩まで剥いで、野生児アピール全開かコイツは。


 行列のしっぽで並ぶわけでもなく、乱れた女子の列を正したり待機してたり妙だとは思ったが交通誘導員的な存在なのか?


 こんな強烈なキャラがいるなら御目下の一人や二人ぶっ飛ばしてくれよ。

 『チンタマ』の法則があるから一筋縄ではいかないのかもしれないが……ああくっそ、気の抜ける名前だ。

 

「彼女は……どうすんだ、有」


 このまま踊り場で足止め喰らってても二進も三進もいかないので、この状況ですら余裕で構えている有を試すように尋ねてみた。


「どうもしない。待つだけだ」


「なんで振内くんと会うのに待つ必要があるんだよ」


「む! どぅわう!」


 俺が『振内』というワードを出すと、途端に食って掛かるように眉を吊り上げ俺の方に集中して吠え始めた。


「な、なんだよ。さっきより怒ってるぞ」


「彼女は『スイカ野郎と一緒だから何かと思えば、てめぇもキートンに用かよ。ハゲ野郎』、そう言いたいようだ」


 有のヤツ、バイリンガルなのか。この娘が何語をしゃべっているのかは見当もつかないが、ホントに何でも出来るな。

 しかしガラわりぃ発言だ……つーかちゃんとした翻訳なんだろうな。過度な意訳は心を傷つけるぞ、お互いに。


「それで、キートンって? ばすたー?」


きいとの愛称だ。カケルン以外は同学年の女子がそう呼んでる」


「へぇ」


 玷は幼馴染だから、そういう呼び方はしっくりこないんだろうな。

 パパをいきなりお父さんって呼ふのに抵抗あるのと同じだ。


「そしてワタシだけがカケルンにミカミンと呼ばれている」


「その情報は別に『必要』じゃねぇ」


「わぎゃ、ぐぅあ」


 おお、少し落ち着いた様子で何かをうったえかけている。


「ああ、構わない」


 何が!? 

 くそ、またもや俺は蚊帳の外か。

  

「今度はなんだ?」


「こうだ、『キートンに会えるのはこの握手会が終わってから、いつもみたく予鈴ギリギリまでは待つことになるぞ』とな」


「……だから大人しく待つのか」


 おいおい、タレントに会いに来たわけじゃないんだぞ。

 御目下とのいざこざがなかったことになったのなら焦ることもないが、さすがに九時近くまで待機しているのはキツいな。


 そりゃ、玷も遠い存在だって敬遠しちゃうに決まってる。

 まさか物理的な問題だとは思ってもみなかったけど、これは想い以前に弁当を届けるだけでも一苦労だ、先が思いやられる。


「待つだけってのも退屈だしさ、純について教えてくれよ。どういうヤツなんだ? 玷との仲を取り持つ俺を助けるくらいだ、親友ポジくらいの情報はあるんだろ」


 ネトリからは名前しか聞いてなかったからな。

 もっとも、この女子の列に玷を射止めるレベルだ、相当な人格者に違いない。

 もしくはロックスター並みのイケてるヤツか。

 

「平凡で特徴のないヤツさ。『幸せになりてー』が口グセだ」


「……」

 

 え、そんだけ? さらっと紹介して、五秒で終わり? 

 必要な情報以外は流さないヤツだって知ってるけど、友人についてはもう少し長く語ろうぜ。


「他にもさ、なんかあるだろ?」

 

 俺が食い下がって見せると、有は瞳を閉じておもむろに顔を見上げた。


「両親は海外旅行で住まいは一軒家。妹と二人で暮らしていて、仲は良好。カケルンとワタシとは保育園からの絡みでよく防波堤でかけっこしたり、浜辺で砂遊びをしていた。それによく灯台近くの『街子鐘まちこがね』広場で遊んだっけな」


「ははー、ごく一般的な最高の青春を送ってきたわけだ」


 なるほど、ダレもがうらやむ『フツー』の男子学生だ。

 男女の恋愛関係なんて映画じゃあるまいし、激しい起伏ばかりのえぐい恋愛劇なんて求められてないもんな。玷も純もこの自然あふれる穏やかな港町で惹かれあったのか。


「マチコガネって、この街の観光スポット的なヤツ?」


「そんなトコだ。この街は漁業が盛んでね。ちょっと前には刺し網漁法といって魚の通り道に……とにかく、男たちが海から無事に帰港した際に鐘を鳴らしていたのだが、さすがに早朝四時に鐘を鳴らすのは苦情が入ったようでね。今は時間をズラして出荷作業が終わった六時ぐらいにしか鐘をならさない」

 

「鐘か……」


 たしか、俺が目覚めた時も鐘の音が聞こえたような。聞こえなかったような……。

 しっかし、ネトリよりもナビしてくれるなぁ。純に関してよりも狭間市について少し詳しくなれた気がするよ。


「ちなみに街子鐘も高純度の『チンタマ』で出来ているんだ、デートスポットにもなっている。もっとも間像よりもタチの悪いウワサが流れている……男の帰りを願う鐘だから、不吉でないにしろ縁起は良くないからな」


 うわ。そりゃあチンタマの鐘だもんなぁ……。

 でもカイシャクによっては男の無事を祝う鐘なんだし、いいデートスポットだと思うのに。


「そういえば御目下のヤツも間像について縁起でもないウワサがどうとか言ってたな。アレも濃いチンタマニウムがあるんだろ。一般の人がアレに近づいて願いなんてしたらさ……」


「『アレ』はべつだ」


 先ほどまでちょっとエンジンかかったように声の調子がよかったのに、俺の選択が誤ったのか『間像』と聞いて神妙な面に戻り、突き放すような口調にもなってしまった。


 情緒が極端なんだよ、ついていけなくなる。お前は俺か。


「何が別なんだ?」


「アレは……確かに『対価』を求める銅像とされているが、ワタシの見立てではアレは『生物』だ」


「……はぁ?」


 何を言ってんのか、俺にはまだよく分かんねーが……暑さのせいからイカれたのか怯えているのか、有の顔に脂汗がにじみ出ているのを俺は見逃さなかった。


「あの『二人』の銅像は狭間市に貢献した有力者とされているが、どの書物にも詳細は記されていない。ありえないんだ……あらゆるデータが消されている。一度だけ調査のために像を削って成分を確認したのだが……」


「器物損壊じゃないの?」


「銅に近い……だが限りなく人体に近い。細胞にたんぱく質、この世の機材では検知できないほどの『チンタマ』を含んだ銅像。アレもゆくゆくはキミに破壊してもらわないとな」


「俺に罪をなすりつけるな!」


 ただの銅像ってだけで有が「むむっ」と深く考え込んでしまう。


 御目下と玷との会話もそれとなく聞いてはいたが、銅像になることを光栄に思っている節がヤツからは感じたけど、それは自分の功績を称えられるからだと……まさか『銅像自体』になるなんて……玷の口ぶりからしても……。


 なんかイヤな予感がする。

 それがどういうことにつながるのか分からないが……有が気味悪いこと言うから怖くなっただけかもしれない。


「有、その像は願をかけたりする縁起物なのか?」


「触れる者もいるが……生き物とは違って間像は『スマホ』のように自分から何をするわけでもない。仮に、何かあっても特別な『トリガー』でもない限り、『チンタマ』が反応するなんてことは……」


 有が何かを言いかけた時、三つ編みの野生児は俺たちの間に割って入り窓に張り付いた。


「──ウワゥ! あぐお、あぐお!」


 なんだなんだ!? 鳥でも見て捕食したくなったのか?!

 野生の血がたぎってやがる!


「バカな……なぜ」


「あ?!」


 気づけば有は窓の外の光景に目を奪われていた。

 俺はその後すぐに差し込んでくる光が自然な太陽光ではなく、どこからか反射してくる虹色のプリズムだと分かり、異常が迫っているのだと肌で感じた。


 俺も有に続いて窓の外を覗いて辺りを見回してみる。

 空からではない、反対側の校舎からでもない。中庭の方から……。


 中庭のすっかり緑々しさ(りょくりょくしさ)が映える桜の木の下に玷がいた。

 銅像二体の前で腰を抜かして……。


 どうし……どうして?


「おい、有! 玷が、なんなんだよ!」


 どうなっているのか理解できない。

 言葉が上手く選べず、分からない、ということを投げかけるしか俺にはできなかった。


「『マズい』、なぜこんなことが……まさかコイツのせいか…?」


「何をぶつぶつ言って──」


 有が窓から目を放し、憤怒の形相で俺の胸倉をつかむ。


「やかましいぞ、カケルンのもとに急ぐんだ。時間が惜しい……時は簡単に戻せないんだぞッ!」


 俺を見下すような物言いや冷めた表情とは打って変わり、激情にかられた有の顔には余裕もなく熱したトマトのようだった。


「来い! 純は後回しだ、カケルンの身に危険がせまっている!」


 有は手をぶん回して俺を突き飛ばすと、階段を下りて行ってしまう。


「ちょ、おいっ! なんだっつぅんだ?!」


 ただごとじゃないと察するには十分だが、いかんせん病み上がりで振り回されてばかりじゃ身体も意識も追いつかない。

 ましてや並んでいた女子たちも異常な虹の光に興味をひかれたようで窓にびっしりと虫のように張り付きだし、「きれー」だの「バズル」だの「エモい」だのはしゃぎだした。


「くそ……」


 玷が危ないってんなら、『トリガー』の出番か。 


 群がる女子を何人か押しのけ、俺はポケットで眠るスマホを握りしめて有の後を追うため中庭を目指す──。


 

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