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百三十七 嘲り

 町中一の笑い顔を見て、チュリントゥンが、一度真顔になってから、その笑い顔に対抗しているかのように、とってもとってもとっても、楽しそうに微笑んだ。


「これは、また、君は、あれかな? 子供だからって、何をしても許されるなんて、思ってはいないよね? 僕は、子供だって、容赦なく殺すよ。さあ、兵士諸君。何をやっているんだい? 早く、この者達をやってしまってくれ給えよ」


 チュリントゥンの、傲岸不遜で、悪逆無道な、有り難いお言葉を頂戴して、互いに顔を見合わせていた、兵士達に向かって、チュリントゥンが、催促するようにそう言った。


「ガゴル。俺は、実は、君の事が大嫌いだ。だから、君と、そう、君の仲間を困らせようと思って、わざと、この、素敵な王子様を挑発するような事を仲間にさせたんだ」


 町中一は、突如として閃いた、実はガゴルは俺の仲間じゃなかったんだぜ。だから、ガゴルに手出しはするんじゃねえ作戦を、チュリントゥンがバカそうなので、今からやっても平気だろうと思い、実行する事にしてみる。


「何を言い出すんだ? 私は」


 町中一は、ガゴルが言葉を出した途端に、魔法をちょちょっと使って、ガゴルの、生きる為に必要な物以外の、すべての動きを止めた。


「う~ん? どういう事なんだい? 仲間割れかい?」


 チュリントゥンが、町中一とガゴルの顔を、交互に見る。


「元々仲間じゃない。そいつらが勝手に俺に絡んで来ていただけだ。王族さんよ。あんたも、あんまり面倒臭い事をするなら、俺は、この国を滅ぼしちゃうぜ?」


 町中一は、それはそれは、悪そうな笑みを作ってみた。


「なんだか、良く分からないが、ガゴル姫は、君に、騙されていた、と、そういうような事かな?」


「ああ、そういうような事だ。そうそう、あの魔物も、実は、俺の手下だったりする」


「なんと? 君は、それほどまでに、危険な人物なのか? そうかそうか。それなら、子供でも良心の呵責なく殺せるというものだ。もうなんとしても殺さなければならないね。兵士諸君。ガゴル姫は、ええっと、後の楽しみもできる事だし。許してあげよう。この少年達だけを殺すんだ」


 三度目のお言葉を聞いても、兵士達は、まだ、戸惑っていて、誰も何もしようとはしなかった。


「無駄だ。兵士達にも動けないようにと、魔法をかけている」


 町中一は、言ってから、兵士達が、動けないようにと、魔法をかける。


「やるじゃないか。だが、いつまでもつかな。これだけの数の者達の動きを封じる魔法だ。すぐにでも魔力切れを起こすはずだ。僕がここで戦ってる事も、そろそろお父上に伝わってるだろうからね。そのうちに、援軍も来るだろう」


 チュリントゥンが、勝ち誇ったように、高らかに笑い声を上げる。


「魔力切れ? そんな物は起こらないぞ。俺の魔力は無尽蔵だ」


「何をバカな事を。そんな者がいるはずがない。ましてや、君のような下民風情が」


「その下民風情に良いようにやられているのは誰だろうな? 口ばかり動かしていないで、俺の魔法を解くなりなんなりしたらどうだ?」


「ふん。生憎と、僕は、解除系の魔法があまり得意ではなくてね。援軍の中には魔法使いもいるからね。彼らが来るまで待つとするよ」


「援軍か。……。じゃあ、あの魔物とその援軍とやらを戦わせてみようか。どうなるかな? お前の国の軍が勝てると思うか?」


 町中一は、魔物の方に目を向けると、おっと。そうだったそうだった。この魔物がなんで王都を襲っているのかを探ってみないとな。理由によっては、戦いを回避できるかも知れないしな。と思う。


「この魔物を本当に操れるのかい? 君は強がって嘘を言ってるんじゃないのかい? 本当はこうやって動きを封じるだけで精一杯なのだろう? しかも、今にも魔法が解けそうなんじゃないのかい?」


「面白いなあ。どうして、そんなになんでも、自分の都合の良いように、考える事ができるんだ?」


 町中一は、この、チュリントゥンという、この、王族の一員という、人物に、主に、小説のネタ的な意味で、興味が湧いて来たので、聞いてみた。


「それは、僕が選ばれた人間だからだよ。僕は王族だからね。僕の上に人はいない。僕の上にいるのはこの世界を作った神様だけだ。すべての人間が僕の前に平伏すし、それは、持っている能力においても同じなんだよ。この世界にどんなに優れた能力を持ってる者がいたとしても、その者が、僕より、僕ら王族よりも、優れてるはずなんてないんだ」


 チュリントゥンが、また、例のドヤ~ンというような顔をする。


「凄いな。そんな考え方を、その年まで、生きていて、持っているなんて。余程、世間知らずなのか、この国の国力が強いのか、はたまた、一族郎党全員揃って救いようのないバカなのか。その全部なのか。とにかく、羨ましい。そんなふうに、生まれていたなら、生きて来られたなら、きっと、凄く、幸せな人生を送れるんだろうな」


「ふん。大きなお世話だよ。そんな事よりも、いつまでこうしている気なんだい? 僕はこの状態に疲れて来た。僕を解放してくれないかい? そうしたら、すぐにでも、君を楽にしてあげられるんだがね?」


「それは、あれか? 負けを認めるって事か?」


 町中一は、どういう反応をするんだろう? と思って、そんなふうに言った。


「負け? 何を言う。今のは君の為だよ。そうだね。君だけだ。君の仲間達は許してあげよう。良く良く考えてみれば、なぜか、君の仲間には美しい女性が多い。君を抱いている女性も、妖精のように見えるけど、妖精にしては、やけに体の大きい女性も、そのスライム? のような者達も、殺さなくっても良い。僕の遊び相手にしてあげても、良いかも知れない」


 チュリントゥンが、皆のそれぞれの意志や、気持ちなんて、まったく存在などしてはいないとでも、思っているかのような表情と口調で言い、舐め回すようないやらしい目で、小説ちゃんやチーちゃんやスライム親子を見た。

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