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百三十六 効かない!?

 その場にいた大勢の兵士達や、ガゴルにとっては、あまりに唐突で、あまりに有り得ない出来事だった為か、チュリントゥンの異変に気が付いているはずなのに、誰も、何もせず、何も言わずに、ただ、ただ、呆然としているようになって、その場に立ち尽くしていた。


「おいおいおいおい。スラ恵~。俺も、もうやっちゃおうって、思ったけど、相手は王族だぞ。これは、ちょっと、やり過ぎなんじゃないかい?」


 最初に、声を上げたのは、町中一であった。町中一も、突然の出来事に呆然としてしまっていたが、もう何度もこんなような出来事を経験していたので、他の者達よりも、こういう事に、耐性ができていたのだった。


「スラ恵。人間の王族とだなんて。狡いわよ。わえも混ぜてもらうわ」


 お母さんスライムが、張り切って、動き出し、チュリントゥンを取り込んでいる、スラ恵と合流する為に、スラ恵に近付き始める。


「お母さん。ちょっと待って。なんか、変。こいつ、全然、感じてない。スラ恵の体も、なんか、おかしい」


 スラ恵が、何やら、苦しそうな、辛そうな、表情を、見せると、その表情と同じように、苦しそうな、辛そうな口調で、そんな事を言う。


「え? スラ恵、大丈夫なの? それに、わえ達のエッチなテクニックが、通用しないなんて」


「チーちゃんの出番~? でんきぃぃぃあんまぁぁぁぁ~?」


 チーちゃんが、とってもとっても、やる気を漲らせて、右足をくいっくいっとやった。


「ちょっとぉん。スラ恵ちゃん。その男から、一度離れた方が、良いと思うわぁん。あんたん、凄く辛そうよぉん」


「うん。そうする」


 スラ恵の体が、ぐにゃぐにゃと動き出し、チュリントゥンの体が、透明なスライムボディの中で移動を始めたが、チュリントゥンの顔が外に出た辺りで、スラ恵の体の動きが止まる。


「残念だったね。僕は、王族だよ? 王族の者は、こんなふうに、エッチな攻めを受けるのには慣れてるんだ。だって、王族は、その子種を常に狙われてるからね。幼い頃から、人間や魔物相手に訓練を受けてるんだよ。君のテクニックは相当な物だが、僕は、そう簡単には、感じたりはしないんだ」


 ドヤ~ンというような顔を、チュリントゥンがしたが、その表情も微妙な物だったし、言っている事もとってもバカっぽかったし、そもそも言っているのがチュリントゥンだったので、町中一は、ただ、なんだそりゃ。全然格好良くないじゃないか。こいつはどうしようもねえ奴だな。としか思わなかった。


「動かせない。お母さん。こいつ、スラ恵の中から、出て行かない」


「そういう技も学んでるんだよ。悪いけど、僕にこんな事をした罰は受けてもらわないとね。君には、死んでもらおう」


 チュリントゥンが、スラ恵の体内にある自身の腕を動かし、腰に帯びている剣の柄に手で触れた。


「まずいわ。あの状態で剣なんて使われたら。スラ恵。頑張って。お母さんがすぐに行くわ」


「お母さん。来ちゃ駄目。お母さん。ごめんなさい。スラ恵は、もう、駄目かも知れない」


「スライムのお嬢さん。何も心配はいらない。君のお母さんも、君の仲間も、すぐに全員君の元に送ってあげるから」


 チュリントゥンが、にやりと、とても楽しそうな、笑みを顔に浮かべると、いよいよ剣を抜こうとした。


「スラ恵。今回の事に懲りたら、もう二度と、良く分からない相手と、唐突にエッチな事を、したりしないようにするんだぞ」


 チュリントゥンの体の動きが不自然な感じで止まると、町中一は、むふふふっと、笑い出しそうな顔をしながら、凄く得意になってそう言った。


「一しゃん。ありがとう。魔法を使ってくれたんだ」


 スラ恵が、言いながら、チュリントゥンを体の中から出して行く。


「あ、当たり前だろ。スラ恵に、何かあったら、えっと、その、あれだよ。皆もお母さんも、悲しむからな」


 町中一は、スラ恵らしからぬあまりにも素直な物言いに、なんだか、急に照れ臭くなったので、しどろもどろになってしまった。


「一しゃん。スラ恵を助けてくれて、本当にありがとう」


「流石、主様なんだわん。やる時はやるんだわん」


「二人ともそんなに褒めないでくれ。当たり前の事をしただけだ」


 町中一は、鼻高々になって、にやにやしつつ、言葉を返す。


「でんきぃぃぃあんまぁぁぁぁ~?」


「うーん。でんきぃぃぃあんまぁぁぁぁ~か。効くのか、効かないのか、試して欲しいけど、どうしたもんかな?」


 町中一は、今更ながらに、やっちゃって良い? とお伺いを立てるように、ガゴルの方に顔を向けた。


「いくら旦那様とその仲間でも、これはやり過ぎだ。なんて事をしてくれたんだ。私がなんとか諫めようとしてたのに」

 

 町中一の視線を受けて、町中一の顔を見て、我に返る事ができたのか、ガゴルが口を開いた。


「大丈夫だ。魔法でどうとでもなる。そんな事より、さっきは、すぐにこのバカを止めなくって、悪かった。嫌な思いをさせてしまった。なんか、ガゴルの立場とか、俺の考えの事とか、あれこれと考えちゃって、すぐに止める事ができなかった」


 町中一は、言い終えてから、スラ恵の体内から排出された後も、不自然な様子で体が動かなくなっている、チュリントゥンの方に目を向ける。


「この程度の、体の自由を奪う程度の、しかも、言葉が出せるなんて中途半端な、魔法でどうとでもなるだと? 何を言ってるんだ? 君は、この僕を、この国を、敵に回したんだぞ。君は、君達は、もう終わりだ。へ~い。この場にいる兵士諸君。抵抗しようとするのなら、ガゴル姫も一緒で構わない。皆揃って、ぶち殺してくれ給えよ」


 チュリントゥンが言ってから、また、にやりと、とても楽しそうな笑みを、顔に浮かべた。

 

「あんたん。こいつ、喋ってるわぁん。魔法が効いてないのぉん?」


「いや。それは、わざとだ。その方が面白そうだからな」


 町中一は、さあ~て。一応ガゴルの返事を聞いてからにするけど、これからどうしてやろうかな? ぐへへへへへ。と思いつつ、チュリントゥンに向かって、にやりっと、とても楽しそうに、笑い返してやった。

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