整理と前進
結花と晋との間に先程まであったヒリついていた空気とはうって変わり暖かな日差しもあり緩やかになったことで心がゆっくりと静まり落ち着いくいく。
ゆるりと時が流れるのを心地よく思い、何時しか瞼を伏せていた。
落ち着いた結花の姿を横目に眺める晋はほんの僅か前まで結花を疑い探りを入れていたぐらいだ。これは致し方ない。今のご時世、何処に間者が潜んでいてもおかしくない時代。一人の時なんかは更に周りに気を張り疑う事が多い。だが、結花を初めは警戒して探ったが結花の反応は底らに居る町の娘らと何ら変わらず恐怖心、それと別の真意を含む真剣な瞳に不思議と晋は警戒を緩めていた。外出はいつ何時警戒を弱めてしまえば捕まって終わりだ。けれども、結花には警戒心が薄れそれどころか居心地が良いとまで思い心配で留まってしまっている。
結花を見守りつつふけっていたが結花の瞼が徐々に開かれ晋と視線がぶつかる。
「すいません。落ち着いたら心地が良い空気にうとうとしてしまって······」
俯きがちに恥らげながら呟いた。
「ふっ、良いさ。静かなあんたも可愛いかったからな。」
にっと口元だけ上げか細く微笑む晋とは逆に結花はさらにりんごが色ずく様に赤く染め上げている。結花の反応が初々しく新鮮だからかからかってしまう。
「かか、可愛いって·····からかわないで下さい。」
お世辞とは分かっていても褒められるということは嬉しいもので顔がはにかみ視線を逸らしてしまう。
晋の言葉に翻弄させられている結花を余所に見た目は軽いが約束を破るようなことは無く、これでもきっちり約束を守る質だ。
「それより、あんたが知りてぇ情報はなんだ?
大分時間が時間が立ってるからな暗くならないぐらいまでなら話してやる。」
「あっ、そ···そうでした!」
思い出した様にあわあわと一人忙しなくしていたが、今知って置かないといけない情報の要点を頭で整理する事で心を落ち着かせた結花は深く息を吸い晋を真っ直ぐ見た。
「····い、今は二千いや···違う、か···えっと年号とこの場所が何処か先ず教えて貰えませんか?」
「····あんたほんとに頭打ったんじゃないか?
まぁいい、今は文久三年の四月でここは京都だ」
ーぶ···文久···三·年って確か江戸時代だったかな····確か千八百···三.四?あぁっ西暦の方が分かりやすかったかもしれない。ー
歴史は割と好きだから気になった時代の大きな事件はの内容は知っていても年号までは朧気にしか覚えてはいない。こんなとこで仇になってしまうとは思はなかった。そんな事を一人落ち込んで項垂れて居たが思い出そうとしてもあやふやで思い出せれない。
「晋さん西暦で教えて貰えませんかっっ。」
「何だぁ、西暦も分からくなっちまったのか····。西暦だと千八百六十三年に成るな。」
結花はその数に眼を大きく瞬かせ驚いたが、心の奥底ではお春が結花の先祖ならば納得するしかない時代を言われて不意に落ちる様だ。けれども、問題はそこではない、今が江戸時代の後期、志しに生きる激しい動乱さ中の幕末だということだ。
状況の整理をするに連れて段々と顔色がほんのり淡桃から白に近い蒼白変わりつつある顔だったがそれは結花が他の部類より特に歴史に興味が湧きとりわけ江戸時代を意欲的に調べたことがある。好きな時代故憧れた事があるが実際に身を持って経験するには平和な時代っ子の結花には刀が交わる血が絶えないこの時代の生活に環境に馴染む難しいだろう。だが、この時代に折角来れたのだからいつ死んでも可笑しくない怖い世だけど時代の変革を離れて見てみたいと思うぐらいの度胸は座ってる。結花自身が此処で進みたい道を定めた事で気持ちが湧き立ち思考を近々起こりうる騒動に記憶を巡らせた。
ー今が文久三年の春頃なら····新選組が会津藩預かりに成り動き出したばかり時期、その後暫くしてから奇兵隊が発足し始めたはず······。ー
喉が乾くき息が詰まる。
確かめないといけない。そうは分かってはいても唇が震え言葉を紡ぐことなく声が空を切る。
ゴクリとつばを呑むことで掠れながも今度は言葉を紡ぐ。
「···しっし、晋さん。もしかして今の京に新撰···いや、壬生浪士組が動しだした頃ですか?」
「あぁ、そうだ。その壬生の狼達が徘徊してやがる。」
良く知っているな。っと言わんばかり返してきた。一般的なことは分からないのに変な集団は知ってるのかと晋は見た。
その結花は結花で思っていたことが口からポツリと滑らせてしまてっいた。
「じゃあ····まだ奇兵隊はできていないのか···。」
「はっ·····。」
結花の呟きにピクリ反応したが頑なに事情をい喋らないからと言って女子を尋問してまで聞く趣味は無いのもあると晋自身が結花の事が気に入ってしまった方が大きい。だから今の呟きは目を瞑ることにした。
「···はぁっ、たまげたもんだ。それを何処で知ったか聞きたい出したいが今回は辞めとこう。そんで他に聞きたいことはないのか?」
奇兵隊の結成はまだ先で広がっていないのに結花は無意識に呟いてしまっていたことを晋に指摘され慌てて手で口を塞いだ。今の結花に問い詰められても話せることがない。だが、何故か問い詰められることはないらしくほっと安堵した。
「はい、ありがとうございました。これだけ教えて貰えれば私なりに整理出来ます。」
「ふぅっ、そうかそれは良かったな。」
にへらと柔らかな笑顔で結花は晋に御礼を伝えた。結花は自身に起こっている事態は分かってはいるがこの一時の楽しい時間を晋とたわいない話しを夕暮れまでの時と思いに喋りだした。
「···晋さんは、私の様な見ず知らずの、それに何も話さない如何にも怪しい者にここまで良くして下さったんですか――。」
ここに来て挙動不審な行動しかして居ない結花は思い切って聞いてみたものの自分で言っててとても哀しい事実。不審者極まりない。
晋は突然にそんな事を聞かれて目を丸くするがふはっと笑い出した。
「そんなん気にしてたのか···。いや、目的あっての行動では無くてな反射···衝動的に動いていた。町の女子とは何処か違う空気を纏っていて惹きつけられた。後は何だ、俺があんたの事を気に入ってちまったからな。」
最後は惚れ惚れする微笑みで告白紛いな事を言われてしまっては頬に熱が灯る。
「あ、ありがとうございます───?」
いまいち晋の言葉の意味をわかっていない様子。天然特有の反応だ。
結花は談話に興じていたが、陽が傾き影の濃さが際立ち空が柿色に染めあげる。時間はあっとゆう間に過ぎてしまうものだ。
「時間·····かっっっ。」
寂しさを悟らせない為の見えを張り笑って見せるも、上手くいかず消え入りそうな儚い笑みを返していた。
結花に暫し見とれてしまっていた晋だが不意に問う。
「小娘──いや、あんたの名前聞いてなかったな。」
結花は目を見開く。晋の名前は聞いていて結花は名乗っていなかっ事を思い出した。
「あっ、すいません。名乗ってなかったですね。私、結花と申します。」
「···結花か····。結花もう帰んな。陽がある内に帰らな闇に消えてしまう。」
─···よく分からない。これは早く帰れって事?遠回しに言わなくっても良いのでは?─
疑問を幾つも頭に浮かばせながら結花は帰路に着くため晋の側から立ち鳥居を目指す。
「────またな····結花····」
通り過ぎ間際に言われたことに何だかこの人となら又会える気がすると思えた。
結花は振り返ることなく神社から遠のいて言った。
◇◇◇◇◇
結花が行った後には、神社の木々の隙間から1人の男が晋二近づいてきた。
「──おい、良いのかあの娘。」
隙間から粗方二人を見ていて知っている。
「良いさ···。」
晋の反応が気に食わないのか睨みを効かせながら文句を言い出す。
「間者かも知れないのだぞ!
それなのに逃がしてどうするんだ。」
返す言葉もない。だがこれは晋がしでかした事だ。
「その時は俺が方をつける。」
真っ直ぐ男に告げた。
「はぁっ、まぁ良いだろう。お前にあの者をあ預けておくぞ───晋作───。」
そう晋こそ幕末を駆けた志士の一人、高杉晋作。
結花はまだ知らない。晋作との出会いで歴史が思わむ変化を生み出した事に――――。