眠りの誘い
「····神社?」
結花は戸惑いがちに呟いてた。
さっきまで島原に連れて行かれると思っていただけに拍子抜けしてしまい安心感からか身体の力が抜けていく。脇道の先に神社があるなんて思ってもいなく、晋を不審に思ってしまっていた。
「おい、あんた今島原に売られるとでも思っていただろ····。」
「·····。」
「その無言は否定しないって事か?
···まぁ、島原の近くだからな不審がるのも分かるが俺はこれでも武士だぞ。郭に売って小銭を稼ぐ様な輩じゃねぇ、俺は俺の武士道で自由にしてんだ」
「疑いました。····すいません!」
「おぅ!分かればいいんだ。」
神社に入り小さいがお社の階段の端にゆっくり身体に響かない様丁寧に結花を座らせた。神社に来るまでの道中の晋の軽い性格の割りに紳士的な厚意に少し驚いたもののお礼を口にする。
「····あっ、ありがとうございます。」
「ふん、当然の事だ。で、体調は大丈夫なのか?」
「····はい、大分良くなりました。」
良いも悪いもお姫様抱っこで移動させれた挙句恥ずかしい脅しをかまされて体調のを気にしてられないくらいだ。
肩を竦め下を向きなからじりじりと晋から距離をとって行く。
間隔に徐々を空けると手をついてた右手がずるり、滑り身体が傾き倒れかけるが晋が横目に様子を窺っていたため 悠々と結花の身体を支えれた。ふたり顔の距離が縮まり、暫く見つめていだか我に返り頬を紅潮させ晋から両手で押し退けて間をとる。
流石、男の人に免疫が無いが為に晋の一挙一動に動きが大きく疲れてきた。
そんな結花の反応は“面白い”が体調が優れない為にここまで連れてこられたのだ。また体調を悪化させない為にも忍びないとは思うが結花のうぶな反応では膝を枕代わりにさせ休ませるには無理だろうな····なら若干休みにくいだろうが肩に寄りかからせる方がいい。
結花を引き寄せ晋は肩に寄りかからせるが抵抗しだしそうだったので“寄りかかるのが嫌なら次は膝に寝かせるが好きな方選べ。他は無しだ。”と呟き一瞬ビクリ結花は反応したが諦める他なく2択の内の前者の晋の肩に寄りかかり暫く目を閉じる事にした。
眠っていたのはほんの僅かのあいだだっただろう。白くぼやけた空間に意識だけが残っている違和感がある感じだ。前にもあった。でも一瞬の出来事で殆ど記憶が朧げだったが今はぼやけてはいるが意識ははっきりしている。
ーあぁ、また聞こえるあの時と同じ声音が掠れながら何か言ってる。ー
「···すっっ····へっ」
「···すっっん···っっっ···」
遠くからの声なのか掠れて言葉が聞き取りずらい。でも声はなんて優しく悲しい響きなんだどうか···っっ。
徐々に声がはっきりと聞こえてくる。そして···。
「す···すいまへん、すいまへんっっっ。弱くってごめんなさい···。あんさんに押し付けるように心を閉じてしまって···」
「っっ···、もしかしてあなたがお春ちゃん···?」
「···えぇ。今あんさんが入っている身体の本当の持ち主っといたところどす。」
「そう、なら私は身体のを返さないとね。」
「····あっ、いえ、今は戻ることはできひんのゃ···すいまへんっっ。」
「どっどうして!」
結花は思っていた返答では無かったことで困惑していた。
「今は何も言えへん···。でも時が来た ら必ず。すいませんっっ。」
「私は貴方の精神と会えたら元に戻れるとばかり思ってっっ····」
「すいまへんっっっ」
「そっか···そっ···かっ···、わかった。後、一つだけ良い?」
「うん?なんや。」
「その···何で私がこの時代のその···お春ちゃんの身体に?」
「···波長が合っとったのと想いが強いのもある。でも、稀にどんなに時が経ち血筋が薄れても僅かに同じ血が残ることで繋がることができるんや。それが違う土地、時代に居ても」
「血筋····。お春は私の先祖に当たるってこと?」
「そうなるなぁ。···今詳しくわ言われへんけれど、うちは身体に戻れない···運良く戻れても身体は動かすことが出来ないくらい弱いのや。どうか時がくるその時まで頼みやすっっ。」
「···わかったよ。その時が来るまでってお春ちゃんが回復するまで?」
「それもある。···もうひとつは時がくるまでは···。」
一頻り話し終えお春は黙った。いや、まだ言い足りないが躊躇しているようだった。その証拠にさっきから“うぅぅ”や“あぁ~、えっと”とうねった声をぼそぼそと呟いているのだった。
いつまでもこの空間に居られるか分からない。
時間が掛かりそうに唸ってるお春に戸惑いながらも声をかける。
「ねえ···さっきから唸ってるけど何かまだ話し足りないことがるの?」
少し間、しーんと静まり返りごくり喉を鳴らす音だけがなった。
「えっと···頼める立場じゃないのは百も承知や、でもお願いや!お父っさんのこと宜しく頼みやすっっ···」
「良いよ、私も心配だから。そう言えばこれから私どう過ごせばいいの。仕事とかしてた?」
「ありがとう!日毎の手伝いをしてただけだからお父っさんの様子見る他は自由にして貰ってもいいよ!···うちは生活出ていいっぱいだったから、新しく何かしてもいいと思うわ。」
「そう?じゃあ頑張らないとね!それとこれから私のことは結花って呼んでよ。」
「····えぇの?」
「身近に居る?みたいなのに他人行儀で寂しいからもっと親しい感じに話したい。」
結花は人を信じやすい性格だ。お春と最後では友達の様に親しくなっていた。だがここは意識が創り出した空間の一角に過ぎない。時は短いもので空間を維持できる一定の時間が迫っていた。意識が掠れ声が遠のいていく。時間がきたのだ。
「結花ちゃ···がん···ばっ···時···の歯··車····まは···開か····ば··かり····」
「えっ?ちょっ····」
その言葉を後に意識が強く引引っ張られるかのように戻されるのだった···。