ただ今町娘になりきります!
一歩踏み出せば着物や袴に身を包んでドラマの端役ともいえる通行人のひとりになったようだった。
いつもと違った風景や人の話し声に異様に、何だか心細くなり先に進むことに怖気づいてしまっているが、そんな思い叱咤にする様に頬をたたいて勇気を出して一歩づつ前えと進み始めた。
身体は難なく動く。けれど、身につけている物は着物で、視界一面を埋めるものも木板での長屋が建てられている。見渡しても何処にも結花が過ごしたマンションや学校のショッピングモールのような高層建築の面影すらない正しく教科書で見たことがる江戸時代の風景さながらでと突拍子もないことだか過ぎった。否応なしにここが────江戸時代はないだろうかと、それももしかして身体は結花のではなく他の誰ではないかと言うことが。
風が吹き抜け結花の体温を攫っていくよで、暫く呆然としていた。
それでも時過ぎるもので帰り方も何でここに居るのかも分からないが、まずはここが何処で今は何年か聞かないとには動けない。
そう思っていても結花は右も左も分からないまま周りを気にしながら少し歩いていたらトントンと左肩あたりを軽く叩かれて反射的に後ろを振り返る。
そこには40代ぐらいに見えるふんわりとした雰囲気の顔の中年の女性がにっこりと微笑んでこちらを見ていた。
そして、私に向かって知らない名前で話しかけてきた。
「あら、お春ちゃんじゃないか。お父っさんは大丈夫かいな?」
私の今の体の人の事だろう。
お春ちゃんのお父さんは身体を壊してるらしくおばさんは心配して声をかけてくれたみたいだった。
でも、お春ちゃんのことを知らないから、何とおばさんに返事を返せばいいのか分からない。そんな事を考えている間におばさんは返事がないことに心配して眉を八の字にして心配顔になりまた、大丈夫かと声をかけてくれる。
兎に角何か普通に返事をと話そう。
「あっ・・・ えっと、大じょ・・!!! 」
結花は大丈夫と言おうとした時、頭を針で刺した時の様な痛みが押し寄せて来ると同時に頭の中にこの子の・・・・お春の記憶が断片的に映画の回想シーンみたいに頭痛と共に流れてきた。
結花はあまりの衝撃に頭を抱えながらその場でしゃがんでしまった。
周りの通りすがりの人達が心配して声をかけてくれる中、さっきまで話していたおばさんが一緒にしゃがんであわあわと焦りながら1番心配してる。
そんな道端でうずくまって居たら段々痛みも和らいできたので話していたおばさんに声をかける。
「しっ、心配かけてもうて、すみまへん……おばはん」
普段は標準語で喋っているけれども、記憶で見た、女の子の喋り方が京弁だった為に今は喋り方も変えて記憶の中で呼んでいたおばさんの名前を呼び少しでも女の子になりきるようにする。
おばさんはほっと安心した様に胸をなで下ろしてまたさっきの心配顔に戻り。
「大丈夫かい? 家まで送ろうかい?」
いきなり頭を抱えてだし苦しそうにしていて放っと気配ないだろう。
けれども、今おばさんと一緒に行けば直ぐにでもボロが出かねない。
今の結花の状況を言葉で説明したところで誰も信じる者は居ない。それより、モノノ怪付きと思われ周りをの人に遠巻きにされるか悪ければこの土地から無一文で追い出されるだろう。
今は、この身体の女の子になきり一旦おばさんから離れて状況を整理しないと行動しようがない。
結花は、少し頭が痛いのを我慢しながらゆっくりり立ち上がり。
「だ…大丈夫や! ほな、うちまだ寄るところあるさかい行くわ!」
「えっ!!ちょ・・・」
おばさん引き留めようとする前に来た道とは反対の方にちょと早く歩くようにしてそこから早々と立ち去った。