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妖狐は闘神使いに恋をした  作者: 森嶋司
4/4

ー転移ー

―……様!!…悠也様!―

(…誰だ?なんでそんな必死に俺の名前を)

「悠也様!生きておられますか!!」

目の前で大粒の涙を零し、必死に問いかけてくる少女の顔が次第にハッキリとしてくる。

「…君は…?」

「あぁよかった…、なんとか無事に転移術が成功しました…!」

俺が目を開け、答えると泣きながら抱き着いてきた。

(あ すげぇいい匂い…)

じゃねぇ…!まずこの娘は誰なんだ?

煩悩をすぐさま払いのける。

「君は誰…?」

「あ!申し訳ございません!私は白夜…じゃなくてハクです!」

ぴょこん、とお行儀良く正座をするとそう答えた。

「ハク…?え もしかして俺が昨日拾った狐…?」

俺は嘘だろ?と思いながらも聞く。

「はい! あの時は本当に…本当に有難う御座いました……!」

地面に埋まる勢いで土下座をするのを必死に止め、俺はもう一つ大事なことを確認する。



「……その耳と尻尾って本物!?」



わずか一瞬しか経っていのに、全世界が凍り付いたような気がするがそんなことはどうでもいい。

「え? もちろん本物ですよ!悠也様!!」

戸惑ったもののすぐ答えるハク。

「あの…1回だけでも良いので…さわ…触らせてもらう事って……」

自分でも気持ち悪い事は承知。しかし抑えられなかった…

「構いませんよ! でも、優しくお願い致します…敏感…なので」

すごーくもじもじして、しかも頬を染めながら答えてくれる。

違うぞ。別にイヤらしい事をするわけじゃない。ただ耳と尻尾を触らせて、

いやモフらせてもらうだけだ!!!


俺は荒い息をなんとか抑えつつハクの見るからにフワフワでサラサラそうな尻尾に触れる

「…あぁ!悠也様 もう少しだけ優し……ンッ!」

「ご、ごめん! 優しく…優しく…」

まるで念仏を唱えるが如く優しく、慎重に、ゆっくりと上から下へと手を下ろす。

つやつやで透き通るような毛並み…派手ではないが鮮やかな薄ピンク色…はぁ……

「ゆ…悠也様……そろそろ……」

(ッハ!)

ハクに声をかけられ我に返る。

正確には何度もかけられていたが気付いていなかったのだ

「ご馳走様でしたぁぁぁ!」

俺は生き良く土下座をかます。

頬を紅色にそめつつ、あわあわとしながら止めるハク

「そんな!こんな事で喜んで頂けてハクも嬉しく思います!」

そんなこと?!いいや違う

恐らく地球に住む人間のごく一部とは言え、結構な数の(特殊な)人間は俺を呪い殺せる程うらやむぞ!

「本当に…生きてて良かった……」

この後数分程へんてこなやり取りをしてようやく現状を把握する。


「つまりハクは俺が拾ったあの狐で、実は100年近く前から生きていた妖狐で、あの時殺そうとしてきた女性はハクの姉。つまり人間じゃなくて妖狐。」

「はい!」

「ちなみに一番疑問なんだけど、俺は何で殺されそうになったの?」

あの時の俺はハクが妖狐だとは知らなかったし。そこが分からないのだ。

「それはですね……」

ハクは一旦間を置いて続ける

「あくまでも予想なのですが、私が悠也様と契約をして姉……咲夜を殺そうとしている…と思ったのでしょう……」

俯きながら説明てくれるハク

契約…?契約ってなんだ?

「契約っていうのはどんな?」

「説明いたします! しかしその前に」

また間を置いた。ちなみに今度は先ほどと違い表情はそこまで暗いものではない。

「私たちは元々普通の動物なのですが、きっかけ…例えば強く「生きたい」と願ったり誰かを「護りたい」と言った願いが元で体、能力が大幅に変わるんです。」

ハク自身も詳しくは知らないが、大雑把に言うとこんな感じらしい。

「そして契約というのは更に強く、そしてその魂が神に近い性質に変わるんです。」

「神に?」

俺は頭いっぱいに?を浮かべる

「えぇ」

「正確には神ではないのですが、神に近しい神格を得られるのです。そして得られる力はとても絶大で…そして怖ろしいほどに……」

ハクはまた暗い顔になる

「なるほどねぇ…」

正直全然理解できていなが、俺が殺されそうになった理由が分かりとりあえずスッキリした。

「そういえばその刀は?」

今更ながら次に気になったので聞いてみる。

「これは私がこの姿になった時にはすでに持っていました。「小狐丸」(こぎつねまる)です」

(小狐丸?確か実際に存在する刀があったような…)

俺がやっていたゲームに出てきた刀だったので調べたことがある。

確かとある刀鍛冶がその時の天皇より刀を作れと命じられ

しかし納得のいく刀が作れずにいた。

そこに人の子供に化けていた狐が手伝い完成した刀

それが「小狐丸」だ

「名前だけは分かるのですがその理由が私にも分からないのです…」

本人にも分からないのか

だがお互い命があるので良しとしよう。

とハクに言う

(そういえばまだ助けてくれたお礼を言ってないな……)

そう思い感謝の言葉を告げる

「でも助けてくれありがとう ハク」

あまって泣かないで

「と、とりあえずここってどこ?見る限り山奥っぽいけど」

そう。周り一面草木に覆われ一見普通の森。なのだが

「なんだかちょっと違うような…」

なにか違和感がある

「すいません!!!」

いきなりの大声でびくっとしてしまう。

「ここは…悠也様の世界、つまり地球ではありません。」

なるほど。

「見た目は普通の地球と変わらないのですが、言わば「もうひとつ」の地球です」

「もうひとつ?」

ん?ん?

「ええぇっと…有体に言ってしまうと…」

「日本が江戸時代くらいのまま時代が進んでいる世界です!」

どうやら俺はよくある異世界転移物の主人公になってしまったようだ。

嘘だろおい!

「まさか学生時代に思い浮かべていた妄想が叶うとはなー……」

人生なにが起こるか本当に分からない、そう思った

「ちなみに戻れたりはする…?」

恐る恐る質問する。

「……申し訳ございません!!!!」

おーけー。命あるだけ儲けもんだ。そう思うしかない。そう。

「親父や母さん、咲にもせめて一言くらい言いたかったけど…しょうがないか」

あ、あと店長!

「こんな時にも悠也様は自分よりも家族を…!さすが悠也様です!」

なんだかこの娘、俺の事過大評価してない?

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