ー出会いー
田上悠也は昔からゲームが好きだった。
小学、中学時代はまだ実家に居たのでまだやりたくても親に強制的に辞めさせられて仕方なく勉強。
しかし大学に入り、一人暮らしになってからはハマりにハマり続けた。
ネットゲーム、ソシャゲ、家庭用ゲーム。
好きなだけやり込んだ。
当然単位も取れるわけもなく。親父、母親は激怒。
大学を辞めるか更生してゲームを辞めるか
普通なら一生はともかく今後の人生を考えて一旦はゲームを辞めて大学卒業を目指すだろう。
しかしこの時俺の頭の中はソシャゲのイベントの事でいっぱいだったんだ。
気づいたらもう20歳を超えていた。
今はとりあえず課金したいから適当にネットカフェでアルバイト。
ご飯は実家暮らしなのでかからない。
家族とは別に良くもなく、悪くもなく。
ただ妹には嫌われてる。
昔は仲良かったんだけどなぁ
AM7時
バイトが終わり、店長に挨拶をして店を出る。
スマホを見たらRAINの通知
「ん? あ、一樹からか。 んー。心霊スポットねぇ…」
一樹は中学時代からの友人だ。僕がやってるスマホゲームのフレンドでもある。
「まぁ暇だし行こうかな。場所は隣の県か」
免許はあるし母さんの車借りればいっか。
とりあえずコンビニで弁当、緑色のエナジードリンク、そして課金用のGTuneカードを買って家に帰る。
「ただまー 母さん、今日の夜車借りて良い?」
母さんは朝ごはんを作りながら返事をする。
「良いよー。でもガソリンは満タンで返して。」
しょうがない。
途中親父に会ったので一応挨拶。
弁当を食べて二時間くらいソシャゲをする。
ガチャ回しとりあえず推しの娘、「SSR妖狐 紫」をゲットした。
三万以内で重ねられたのでかなり運が良い。
「んー、とりあえず限凸もしたし仮眠しよ。」
一樹からRAINが帰ってきて現地集合する事になった。
時間は夜の11時。
「あいつ、多分友香も連れてくるんだろうな」
友香は高校時代に知り合った友人。
気さくで僕がやっているソシャゲ『耳っ娘モンスター!』を知っていたらしく話すようになった。
なんだかんだあり、友香と一樹は仲良くなり2人は付き合い始めた。
まぁ2人と遊ぶの楽しいし、邪魔にならない程度に怖がらせよ
そんな事を考えている内に眠くなり、起きたら夜の 9時
「そろそろ行かないと」
シャワーを浴びて適当に身支度を済ませ、車に乗り込む。
「下道で大体一時間くらいか、ゆっくり行っても大丈夫だな」
途中コンビニで緑色のエナドリを買った。
そして何事もなく目的の廃神社へ到着。
「遅れずに来るの珍しいなー、ってかなんか前会った時より痩せてない?」
「目の隈も酷いけど大丈夫?」
一樹と友香が話しかけて来る。
「この間は本当にごめんって ここ最近夜勤と早番が入れ替わりで入っててさ。ちょっと寝不足なだけだから平気」
一応四時間くらいは寝れているので大丈夫なはず。きっと
「まぁ本人が大丈夫ってんなら平気か」
そう言って一樹はタバコに火をつけてから喋り出す。
「ここなんだけど、前やってたテレビで見たんだがマジで出るらしい」
一樹が言うには10年くらい前に管理していた人が亡くなり、今は誰も神主や管理人も居ないらしい。
一応祀っている神様は稲荷様、宇迦之御魂大神様と書いてあった。
軽くネットで調べた限りそんな感じのことが書いてあった。
「さすがに中まで入るのは怖いって言うより罰当たりよね」
「ちらっと見る限りかなり荒らされてるね、お札とか折られてる」
僕と友香はあたりを見回して言った。
床もボロボロで柱なんかも所々折れている。
「少し写真撮ったら帰るか」
一樹がスマホで写真を撮りながら呟く
「こんなに荒らされて、祭られてる神様絶対怒ってるよね…」
友香は少し引き気味で言う。
俺も頷きながら思う
もし居たら俺達も危ないだろうなぁ
三十分程して散策は終了し、三人で近くのファミレスでご飯を食べてからお開きになった。
「悠也もそろそろ正社員なり安定した職ついた方が良いぜ?」
「分かってはいるんだけどさ。まぁもう少し今のままで…」
「その内やりたい事出来たりするって!それに昔みたいに引きこもってる訳じゃないんだし平気よ」
「確かにな んじゃ、気をつけて帰れな」
そんなやり取りをして別れた。
車に戻り家路に着く。
「正社員かー」
安定するのは分かる。しかし精神的にアルバイトと言う立場が楽なんだ。
山道を下っていると車のライトに照らされ道端に何が蹲っているものが見えた。
「ん? たぬきかなんかか?」
別段急いではいなかったし後続も居なかったのでハザードを焚き車を路肩に止める。
近づいてよく見てみると、どうやら狐だ。
完全に怯えていて寒さで震えている。
「…くぅ」
特別何ができると言う訳じゃない
が。見て見ぬふりはしたくない
とりあえず上着のジャンパーに包んで車に戻る
狐は暴れる事もなくなされるままだ
「連れて帰るのはまぁ良いとして、餌どうしよう」
運転しながら呟く
自宅近くのコンビニで一旦車を停めてスマホで調べてみる。
どうやらキャットフードが良いらしい。
適当に買い物を済ませ、帰宅した。
温めた牛乳と猫缶をほぐして皿に出す。
最初は警戒してジャンパーから動かなかったが数分もしない内に匂いに釣られて食べたした。
「連れてきちゃったけどさすがに飼えないしなぁ 具合良くなったら元の所に返せばいっか」
考えている間にどうやら食べ終わって眠いのかうとうとしている。
「何もしないから安心して寝てね」
そう狐に語りかけると狐は「みゃぁ」と返事をして眠った。
「俺も飯食って寝るか」