夏休みに入って
梅雨も終わり、真夏の太陽が降り注ぐ季節になった。
夏休みに入ると将太はメンバーに声をかけ、スタジオを借り、時折、練習を行った。
唯一の女性メンバーの川原奈美子に練習の日時を伝える電話をした時、奈美子は「女の私がバンドのメンバーで良いのでしょうか」と言った。
将太は「何を気を使っているの。気にしないで良いよ」と答えた。
スタジオでの練習を終えるとメンバーは喫茶店に入り、反省会をした。
奈美子は終始無言でメンバーの話を聞いていた。
その表情は、何処と無く、暗かった。
メンバーが帰った後、私と奈美子は大通り公園を散歩した。
二人でベンチに座ると奈美子は「脱退したい」と言った。
「なぜ」と将太が聞くと「女の私がいるとやりにくい」と奈美子は言った。
「そんな事、全然無いよ」と将太が言うと奈美子は「何故」と聞いた。
「あなたはバンドの重要なメンバーだ」と将太は言った。
「わかりました」と言い奈美子はベンチから立った」
将太は「辞めないでね」と言い、立ち上がり、奈美子を抱き締めた。
二人は手をつないで駅に向かった。
それから暫くして、合宿の日を迎えた。
夜9時頃、学校に集合し、アンプ、ドラム、キーボードなど機材を皆で手分けしバスに運び、顧問の先生と共に長野県の合宿地に向かった。