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侵食

「おはよう、犯罪者さん」


 俺は馬鹿だ。本当に馬鹿だ。


「私、してもいいなんて一言も言ってないかんね」


 何度見誤れば気が済む。


「さーてと」


 理性が何の為にあるのか。それを知るのは、いつも全てが終わった後だ。


「欲しいバッグがあるんだー。付いてきてくれるよね? なおじぃ」




 マオの要求はエスカレートした。

 食事、服、バッグ、アクセサリー。今までが良心的過ぎると思えるほど、彼女が手を出す金額は桁が変わった。

 今まで月の給料分だけで賄えていたものが足りなくなり、いよいよ貯金から崩さざるを得ない事態にまで陥った。しばらくは持ちこたえる事は出来るだろうが、こんなペースで消費が続いたら一年足らずで借金を抱えるハメになる。


 終わり。


 何度も想像した終焉。

 マオに全てをぶちまけられ、牢屋に閉じ込められた自分の姿を何度も夢やイメージで見た。

 違う。終わり方のバリエーションなんて他にもあるんだ。イメージに一つ、借金取りに追い立てられ首を括る自分の姿が追加された。


 終わるのか。ここで。


 何の為に生きてきた。

 こんな訳の分からない女子高生如きに全てを奪われて終わるのか。


 ――殺す?


 ふいに自然と浮かんだ悍ましい発想に血の気が引いた。ここまで追い込まれているのか、俺は。

 もちろんダメだ。それこそ本末転倒だ。

 

 愚かが過ぎた。

 いいように振り回されながら、どこかでそれを少し楽しんでいる自分もいた。小遣い程度の金で女子高生に振り回されるのも悪くはないなんて思っていた自分もいた。自業自得だ。


 ――限界だ。


 でももう、無理だ。遊びの範疇を越えている。俺は携帯を取り出した。


『話がある』


 こんなメッセージを送ったのは初めてだ。

 無傷では終われないだろう。

 でもどうせ終わるなら、抗って終わろう。


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