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魔が差した

 魔が差す。そんな言葉がある。

 ふとした拍子に心の隙間に入り込んだ悪魔が正常な判断能力を奪い、誤った道へ足を踏み入れさせてしまう。


 大抵は言い訳の言葉に過ぎない。

 『そんなつもりはなかった。魔が差したんです』

 そんな事を言われて、はいそうですかで済むような事はほぼないだろう。


 だが実際、世界中で数多の人間が不意に差し出された悪魔の手に誘われ、破滅へと堕ちている。昨日まで何不自由のない暮らしをしていた人間が、必要のない崖からわざわざ自ら飛び込む。

 愚か。意味不明。しかし、人間という生き物は不思議なもので、その先に一切の幸せがない事が分かっていたとしても、崖の向こうへ飛び込んでみたいという好奇心が上回ってしまう事がある。

 そこから実際に飛び込むかどうか。その境目こそ、人間でいるか悪魔でいるかを選び取っている瞬間なのかもしれない。ほんの一時でも悪魔に誑かされてもいいと思った瞬間、人は一瞬人ではなくなるのだろう。


 敷き詰められた人間の肉達に挟まれながら、俺はそんな事を考えていた。妙に冷静だった。

 そうだ。俺はこの時既に悪魔の手を掴んでしまっていた。


 普通なら絶対にそんな事はしない。

 三十三年間、俺はずっと真面目に生きてきた。小さなイタズラレベルならもちろんある。だが、法を犯すような罪に手を染めた事などない。


 ――それが、それがどうして。


 魔が差した。

 まさにこれだ。そうとしか言いようがない。そんな事をすれば、人生が崩壊する事なんて目に見えている。一般の社会人なら考えなくても分かる事だ。

 なのに、なのに。俺の掌は。


 しっかりと、目の前の女子高生の尻を揉みしだいていた。


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