6
カルマと名付けたのは、父親だった。
カルマ―業を背負うもの。
生者でありながら、死者でもあるもの。
またはどちらでもない存在として。
そのことが本当に業なのか、カルマは分からない。
ただ、生きていて欲しいと強く願われて、生まれてきたことは自覚していた。
「だから…ボクは生きるんですよ。お母さん」
漆黒の空に浮かぶ、満月を見上げながら、カルマは微笑んだ。
「父さんとも仲良くしてますから、安心してくださいね? 滅多なことじゃ、正体はバレませんし…」
…まあ同属を除けば、だが。
「勉強も運動も頑張っています。友達も多いんですよ? 好きな人はいませんが、尊敬している人はいます。…なかなか良い人生を送っていると思いませんか?」
そしてカルマは目的地へ着いた。
自分の存在と同じように、この世にあって、この世のものじゃない、小物屋に。
深夜遅くなのに、店からは光があふれ出ていた。
「今晩は。ソウマさん、いらっしゃいますか?」
「いらっしゃーい」
「いらっしゃいませ。店主を今、呼びに行きますので、少々お待ちください」
茶髪で明るそうな青年と、真面目そうな青年に出迎えられた。
「あれ? バイトの方ですか?」
「おうよ! オレはハズミ。こっちはマミヤ。新入りなんだ」
「何でお前はお客様にエラそうなんだ?」
マミヤは冷ややかにツッこむと、店の奥へ行った。
まもなく、店主ことソウマが姿を現した。
「おや、カルマ。お久し振りですねぇ。今日はどうしました?」
「実はちょっと困った物がありまして…」