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白テイマーさん迷子

ジャンル別日間ランキング一桁入り、ありがとうございます!!

正直発狂してます。期待に応えられるよう頑張ります。


 早朝。

 カーテンの隙間からは太陽の眩しい明かりが漏れ、目を閉じている私にさえもそれは突き刺さる。

 車の走る音が聞こえてきて、少し重たい身体を起こす。

 カーテンを開けると、そこには立派なスーツを着た人や、制服を着た学生。それにたくさんの車が見られた。

 朝早くから、お疲れさまです。と、一礼だけすると顔を洗って、パンを焼く。

 少し焦げの付いたパンを頬張って、私はパソコンを起動する。


 なにも変わることはないいつもの日常。

 私が逃げた世界の果て。地獄どころか天国にも思える。

 パソコンを眠たげな眼でぼぉーっと眺めていると、とあるものを見つける。


「……動画配信なんて機能あるんだ」


 それは、あのゲーム【MSW】の動画だった。

 別に興味があるわけでも、動画をよく見ているわけでもない私は、されど、あれ以来あまりやれていないな。と思ってなのか開いていた。

 内容は、パーティーか何かでボスみたいのをかっこよくやっつけるというもの。

 恐らくはごくごく普通にありふれた内容のそれは、だけれども、私の心を掴むには十分だった。

 あの時やってから既に数日。最近は現実リアルの方が少し忙しくてできていなかったけれど、動画を見終えた私は、ゲームを起動していた。



 ゲームにログインして、最初に目に入るのは、あの噴水だった。

 どうやら、最後に訪れた街の中央でログインされるようだ。

 私がとりあえずどうしようかと悩んでいると、足に柔らかいふわふわとした感触がやってくる。


「……ひゃっ!?」


 吃驚して、飛びのき、自分の居た場所を見てみると、そこにはあの狼がいた。


「あ……」


 仮とはいえ、契約したのだ。プレイヤーがログインしたら近くにいるのは普通ではあった。

 が、そんなこと私は知る筈がなかった。


「……ごめんね、随分と待たせて」


 すり寄ってくるもう随分と元気になったその狼を撫で、抱きかかえる。

 最初のような抵抗はすでになく、その身体を私に預けてくれていた。


「さて、どうしよう……」


 まず何をやらなきゃいけないんだっけ?

 いろいろと教えてもらったけれど、むしろ多すぎてよくわからなくなっていた。

 そこで、ふと思い出す。


「あっ……そうだ」


 チュートリアルやらなきゃ。

 そんなごく当たり前で、しかしやっていなかったことを思いだして、すこしため息をつく。

 なんで私は、そんなこともやれてないんだろ……。

 そうして、今度は寄り道なんかしない。と決意をして私は再び森の中へと向かった。



 狼を頭に乗せ、森まで相変わらずに接敵することなくたどり着いた私は、再びラスボスに匹敵する厄介さをもつ林檎を目の前にする。

 手ごわい、手ごわすぎる。あんな風に配置されたら取りたくなっちゃうよ。


「でも……」


 今回の私は、前回の私とは一味も二味も違うのだ。

 なぜなら! 私は既に大量の林檎を所持している。つまり、そんなにたくさんはいらないのだ。

 つまり私はこの勝負、負けることはない。完璧すぎる作戦であった。



 このゲーム世界では、太陽は十二時間で回っている。現実で一日が経つと、この世界では二日間が経つのだ。

 そして、今現在。既に日が傾き、既に森の中は陰って暗くなってしまっていた。

 なんでそんなことになるかって? もう説明しなくてもわかりそうだよ……。


「……ここ、どこぉ……」


 暗い森の中。私は泣き出しそうな顔をしながらそう音をあげてしまっていた。

 なんてことはない。もう大丈夫と高を括っていたら、ふと、きのこを見つけそれを取ろうとしたら足を滑らせたのだ。崖へ。

 今までに出したことのないくらいの悲鳴を上げながら落下していって、普通に死を覚悟したけど、頭の上の狼が、先に着地したかと思うと、一瞬にして三メートルほどまで大きくなったのだ。

 何が起きたのかわからなかった私は、そのまま狼の上に落ちていき、柔らかい毛並みに包まれて、ダメージはほとんどなかった。

 まぁ、すぐに元のサイズに戻って地面に頭から落とされたけど……。

 それが一体何だったのかを見てみると、狼のスキルに【身体操作】というものが追加されていた。多分これの効果なのだろう。

 いつ覚えたのさ……。


 そんなこんながあって、なんとか命はあるけれど、私は今落ちた崖を上ることもできず、ただひたすらに下の方から繋がっていたなんか深そうな森を歩いている。

 少しおなかもすいてきたし、陽が見えなくなってきて寒くもなってきた。

 もしかしなくてもこれはピンチなのだろう。


「……食べ物」


 何か食べるものはないかと探してみると、林檎と、さっき途中で拾った赤と紫で彩られたきのこがあった。

 うん。どう考えても毒だよね。

 メニューから林檎を二つ取り出して、樹に凭れかかって休憩をする。

 一つを狼に渡すと、狼は少し悩んだ後に美味しそうに食べ始める。


「ゲームだけど、これ美味しいのかな……?」


 とりあえず、取り出しては見たものの本当に食べれるのかと疑問になりながらも、覚悟を決め、大きな一口で林檎を頬張る。


「……っ!! これ……!!」


 その味は、とても美味しかった。

 普段からカップ麺などしか食べてないのもあるのかもしれないけれど、採れたて新鮮な林檎のようで、瑞々しくとても甘い。

 気づいた時には、林檎はなくなっていた。


「ゲームなのにこんなに美味しいなんて……」


 これ、現実で食事いらないのでは?

 とも思ったけれど多分それはまた別なのだろう。


 美味しい林檎を食べ、お腹も膨れ、暗くて何かすることもできなかった私はそこで少しの間、狼と戯れていた。

 けれど、それは間違いだった。

 こんな森の深く。だというのに、ここらへんにはモンスターは見当たらなかった。

 いなかったのではなかった。


 戯れていると、近くから何か大きな音が聞こえる。

 大きな音は、少しづつこちらに近づいているように感じた。


「……なんのおと?」


 そう思って、辺りを見渡してみると、自分の居た樹の裏側にいた”それ”と目が合う。

 それは、どう見ても五メートルはあろう巨大な黒い熊だった。

感想、評価、ブクマ、お待ちしてます。

また、こうしたほうがいいよなど、教えていただけるととても助かります。

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