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白テイマーさんと友達

【報告】

前話でミスが見つかり、訂正させていただきました。申し訳ないです。

ステータス欄での変更が多少ございますので、確認だけいただけるとありがたいです。

今後も気を付けますが、こういったミスがあるかとは思います。ご了承ください。


「こんばんはー」


「こんばんは……」


「もう作業やってたりします? わたし、まだちょっと勉強の方やってて、できてないんですよ」


「そう……ですか。私は、ちょっと……今のうちに進めないと、と思って先に……やってますね」


「ですよねー。今準備しますので、もう少しお待ちくだされー」


 時刻は九時。

 私はやることも終え、既にお絵かきをしていた。

 今書いているのは、フリーのお仕事で依頼が来ていた一枚絵。別に期限が近いわけでもない。というか、期限を指定されていない依頼だった。

 今は時間になって、約束していた作業通話をし始めたところ。

 ミュート機能を使っていないのか、後ろの方でなにやらガタガタと音がしているのがイヤホン越しに耳に伝わってくる。

 通話の相手は、私の唯一の友達。とはいっても、知り合ったのは最近だけど……。

 実際に現実(リアル)であったのは一度しかないけれど、数年間某SNSで仲良くしてもらっている。

 今の私の相方であり、作家の”ナギさん”だ。


「あーっ!! 本が!! 雪崩がーーっ!!」


 イヤホン越しに騒々しい声がけたたましく響く。

 しっかりしている人なのに、なかなかにこういったことがあって、話していて飽きない。

 私があまり喋るタイプじゃないということもあって、あちらから話を振ってくれるので、話していても気が楽なのだ。


「いやー、もう本はいいやー。後でやるとしまするー。ごめんなさい、うるさくて」


「いえ……慣れてますから……」


 なんとか、やることを終えたのか、遠かった声がすぐ近くまで来て、私にそう告げる。

 ナギさんは「ですよねー」とだけ言って、そのまま話始める。


「さて、じゃあわたしもいい加減作業を開始するとしますかね。しらゆきさんに負けてられないし!」


「なんの勝負ですか……まったく。やってること、違う……じゃないですか……」


「いいじゃん別に。作業には変わりないということで、わたしにも絵が書けたらなぁ……」


「教えますよ……? 基礎とかでよかったら」


「ほんと……!? あーでも今そんな余裕ないからなー。それはまたの機会にってことで」


「ですね……」


 そんな他愛もない会話をしながら、夜は過ぎていく。

 ふと、作業をしていた手を止め、一休憩を挟んでいた時だった。ナギさんは思い出したかのように「そういえば」と話題を持ち出す。


「送ったゲームって届きました? そろそろ届くころだったと思うんですけど……」


 送ったゲームとは、ようするにあれのことだろう。元々、ナギさんがハマっていたゲームであり、それを私と一緒にやりたいからと、ほぼ無理やりながらに送られることになったのだ。

 せめてお金は払うと言ったけれども、それもいいからいいからと、止められてしまった。元々、口が達者ではない上に、あまり自分の意見を言うのが得意ではない私がナギさんに勝てるはずがなかった。


「あっ……はい、届きました。ほんとうに送ってくるとは思わなかったですけど……ありがとうございます……」


 ビデオ通話ではないので、見えることはないのだが、私は深々と頭を下げる。

 これは、私の癖でもあった。


「そっかーよかった。あ、もう開けました? ダウンロードくらいしました?」


「あっ、えっと……チュートリアルをやろうとして、まだそれができてないところです……」


 チュートリアルの途中で迷ってしまったことは、言わなかった。聞かれなかったから、ということにして。

 だって、恥ずかしいでしょ。


「お~、思ったよりもやってくれてる。よかった~あんま乗り気じゃないのかなぁと思ってたから」


「ゲーム自体は、好きですよ……ただ送ってもらうことにちょっと躊躇いがあっただけで……」


「そっかそっか、それで!? 職業は何にしたの? 剣士? それとも魔法使い? 狩人もいいよね~!!」


「……えっと、その……」


 キラキラとした声でそう言われると、私は自分の選んだ職業の話を思い出す。

 ……どうしよう。


「あれ? どうしたの? 大丈夫ですかー? 回線でも悪いのかな?」


「あっ、多分……回線は問題ないかと……」


「おぉ、そうかよかったよかった。それで、えっとなんの話してたっけ……?」


「……職業について……ですね。……私が選んだのは、従魔師です……すみませんしっかりと調べもせずに……」


 せっかくお金をわざわざ出してもらってまで、勧めてもらったゲームなのに……。

 そう思うと、心臓が締め付けられる。


「従魔師かーいいよね。憧れだよねー私も空飛ぶモンスター捕まえて空飛んだりしてみたいなぁ、従魔師もやってみたいんだよねー」


 しかし、返ってきた返事は、私が予想していたことではなかった。

 いや、むしろ予想とは真逆のものだった。


「え……あの、従魔師って外れ職なんじゃ……」


「ん、あーそうだね。なんか面倒くさいことが多くて、そうらしいね。確か、似たような職で召喚士があって、そっちのが断然強いらしいからねー」


「じゃあ……」


 「やっぱり」と続けようとした私の口を遮るようにして、ナギさんは少し声を張って答える。


「でも、そんなの関係ないよ。ゲームなんだもん。楽しめること、それがわたしたちの勝利だよ」


 あっさりと、そう言ってのけた。

 春兎さんに職業について、色々と言われてからも、私は一人でしばらく考えていた。今からでも変えるべきか、もっといい選択をするべきだったか、と。

 でも、そんな考えを全て覆すかのような、そんなことをこの人は、簡単に言ってしまうんだ。

 やっぱ、ナギさんはすごいや。


「そっか……」


「そうだよー。わたしはどうしようかなー? β版とは違う職業選べるらしいしなー」


「βの時は、なんの職業だったんです……?」


「わたし? わたしはね魔法剣士やってたよ。職業的には剣士なんだけどね? スキルで魔法を取って、どこでも立ち回れるようなメインアタッカーやってたんだ」


 そういうのもあるんだ。と少し感心を覚えつつ、少し余裕を持った気持ちで、話を続けていく。


「どうしようかなーどれもやってみたいんだよー」


「私と一緒に、従魔師、やります……?」


 半分以上冗談で、私はそんなことを言っていた。

 最も、そんなことはナギさんもわかってくれている、はずだったからだ。


「そうしようかな」


「えっ……!?」


 だから、いきなりそんなことを言われて、私は困惑していた。休憩がてら飲んでいた角砂糖三個入りのコーヒーを床にぶちまけそうになるところだった。


「えっ……ってなにさ、言ったのはしらゆきさんじゃん。わたし、それに賛同しただけだよ?」


「いや、まぁ、そうなんですけど……」


「冗談でも、わたしは本気にしちゃうからね。それに、別に従魔師が気にならないわけじゃないし、どうせだから、しらゆきさんと一緒にやるのもあり」


 ニヒヒと笑いながら、手をピースにしているナギさんの姿が、容易に浮かんでくるようだった。


「とは言っても、少なくとも作業がひと段落するまで、わたしは無理だからなぁー。もうすぐテストもあるし、そんなわけで、しらゆきさん先にある程度進めてくれていいからさ、わたしはしらゆきさんの得た知識をもらって楽に攻略させてもらうよ」


「卑怯な……」


「狡猾、といいたまえ」


「……卑怯です」


「ぬっ……強情な……仕方がないならばしらゆきさんをモデルにして発禁小説でも書くとしますか……」


「やめて……!! 狡猾。狡猾でいいから!!!」


「はっはっは、もう遅いですぞ、わたしの頭のなかで既に構築されておるわ!!」


 高笑いをし、私の謝罪の声を聴くことなく、ナギさんは書き進めていく。

 その日、私の家では大きな悲鳴が響いておりました。


たくさんのブクマありがとうございます。頑張っていくので応援よろしくお願いします。

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