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白テイマーさんと精霊

少し名前が変わりました。大した変更ではないです。


 その女性は服を着ていない。というより、身体を持っていないように見えた。水を女性の形にしたとでもいうのが正しいのだろうか、少なくとも通常の人間とは異なった身体を保ったまま、ふよふよと揺らめいていた。まるで二次元のキャラクターのように整った顔に綺麗な水色に光彩のグラデーションがかかった髪をしており、この世界のモンスターか何かであるということを思わせる。

 不思議な姿をした女性は、何が起きたのか理解できずに思考が停止して、固まっていた私に近づき、問いかける。


「あれ、固まっちゃった? 大丈夫?」


「え、いや、ひゃ、ひゃい……っ! 大丈夫です……!?」


 近くに顔が現れ、その整った顔に随分と綺麗だなぁと現実逃避していたところに話しかけてしまい、私はなんとも情けなく、声が裏返ってしまう。


「そんな驚かないでよ、別に取って食おうってわけじゃないから」


「……ご、ごめんなさい」


「まぁ、いいや。それで? お客さんは如何様でここに来たんだい?」


「……え、っと気づいたらここにいて、よくわかってなくて……その、ここはどこなの?」


 言葉がしっかりと出てこなくて、継ぎ接ぎになってしまっている気がしてならなかったけれど、こんな綺麗な人と話すなんて誰でも緊張する。うん。仕方ないよね……。


「……迷い子とはこれまた珍しい。それじゃあ驚いていたのはそれが理由かな」


 多分それは私がただ人見知りだからだと思う……。


「それじゃあ、簡単に説明してあげるよ」


 そう言うと、目の前の女性は両手を大きく広げる。そしてそれに合わせるようにして周りの水が動き出し、波を起こしていく。

 波はそのまま何かを形作るように固まっていき、女性の後方に大きな、椅子を作り上げた。

 女性はそのままそこに腰かけ、こちらに微笑みかけ、言葉を続ける。


「ここは水の精霊。ぼくの住処であり、海底迷宮最奥。その隠し部屋さ」


「精……霊……」


 予想はしていたけれど、やはり(プレイヤー)キャラクターではなく、このゲームのキャラクター。モンスターや町にいる人と変わらない存在なのだという。


「そう、精霊。一応上位精霊で、この海底迷宮だけじゃなく、この辺りの海はぼくの管轄だったりするんだよ。偉いんだよ」


 精霊であるという彼女は自慢げにそう話す。

 腕を組んで、どうだすごいだろう? といった空気を醸し出していた。


「……す、すごいね? でもなんで私はそんなところに来れたの……?」


 このままだと話が進まない気がした私は、とりあえず疑問を解消するべく、話を少し逸らす。


「んっと、それは……ごめん。ぼくにもよくわからないんだよね。お客さんとして招待されるべきレベルにも達してないし、そもそも一人じゃ入れないはずなんだけど……」


「……そっか、あ、でも一人ではないのかも。確か従魔もパーティー人数には含まれるよね……?」


 そう言って、足の近くでウロチョロとしていた狼を抱きかかえて、彼女に見せる。


「……おや、また珍しいモンスターを連れているね? ってぼくは人のこと言えないけど……」


 彼女は、私の腕に収まっている狼を見つめると、その手を伸ばし、優しく頭を撫でる。

 やはり話をしていて分かったけれど、どうやら敵対意識もないみたいだった。


「召喚獣ってわけでじゃないだろうし、従魔師なようだね。レベルは、ふむ7か……」


「……見ただけでそんなにわかるの?」


 人のステータスを見るのは覗き見るか、教えてもらう。それ以上は専用のスキルがいると聞く。また、隠蔽系のスキルを持っていると覗き見たりすることもできなくなるらしい。

 私の場合は、そんなスキルは持ってないから、普通に見ればまぁ、わかるのだけど……。今は窓すら開いていないから見ることはできないはず……。


「これでも上位精霊だからね。スキルだって人より少しはあるってことだよ」


「そっか……本当にすごいんだ」


「まぁ、見れるものには限度があるけどね。さて、お客さん。今度はあなたのことを教えてよ。ずっとここにいるのも退屈なんだ」


 そう言って指をはじくと、私の目の前にも椅子が一つ用意される。


「どうせお話するんだ。さぁ、座って」


「あ、ありがとう……」


 水で生成された椅子に腰かけると少しひんやりとした感覚を覚える。スライムのようにぷるぷるしているけれど、私が座っても形が崩れることはない。バランスも悪くないし、なんとも不思議な感覚だった。


「えっと、まず。私は『しらゆき』……こっちの狼が私の従魔。……まだ仮契約だから、名前も付けれてないんだけど」


「うん、しらゆきだね。覚えたよ。それじゃあしらゆき、せっかくだしぼくと契約しない?」


「え、うん。…………って、え!?」


「うん。じゃあ契約は受理された。よろしくね」


 彼女がそう言った瞬間。私達の周りに魔法陣のようなものが浮き出たかと思うと、周囲の水が渦を巻き起こし、魔法陣を囲むように、そしてこの空間に私達だけを取り残す様にして閉鎖される。


「え、あの……ちょっとまって!?」


「精霊との契約は絶対なんだよ。答えちゃった以上逃すわけないじゃん。しらゆき」


 その微笑みは今までと同じ優しい笑顔だったはずなのに、何故だか、少し恐怖を感じる。そんな笑顔だった。

前回投稿時、久しぶりに日間ランキングに乗ることができました。ありがとうございます。

こんな調子ですが、少しづつ進んで行きますので、適当に応援してくださるとありがたいです。

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