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白テイマーさんの迷宮探索


 巨大な烏賊をなんとか無事撃破した私は、そのまま海底遺跡の中へと進んでいた。

 既に体力もそんななくて、帰りたい気持ちでいっぱいだったけれど、初心者には優しい素材とかそういったものも落ちてるらしいし、一回帰ってもう一度あれと戦うのが心の底から嫌だったのだ。

 海底遺跡の外は何故か少し明るかったけれど、中はかなり真っ暗になっていた。

 自分の周りくらいしか見ることができず、この状態のまま探索をするのは得策とは言えないだろう。

 普通は専用の明かりとなる物を購入したり、魔法による明かりを灯したりするらしいのだが、なにせお金がなかった。

 攻略した人の話を見るにどうやら明かりはなくてもなんとかなるのだという。


 基本的に海底遺跡内は迷路のようになっているそうで、罠やら宝箱やらが設置されているらしく、敵は雑魚ばかりで、楽しく冒険できる場所らしい。

 個人的にも人が沢山いるわけでもなく、明るくもない。むしろこういった場所は落ち着く場所だったので、なんとも心が安らぐ。まるで家にでもいる気分だった。


「少し暗すぎるけど……」


 罠というのがどういったものなのかはわからないけれど、この世界での召喚獣やらは罠などには敏感らしく、引っかかる前に教えてくれるらしいので、恐らく心配することはないままに踏破することができるだろう。

 壁を伝いながら進むという常套手段を何の面白みもなくしながら真っ暗な白い石に囲われたその空間を進んで行くと、目の前は壁。


「……行き止まり、かな」


 どうやら私は運もないらしく、さっきから壁のぶち当たってばかりである。

 そんな壁と対面し続けて、歩くのにも疲れてきたころ、近くから何かの音が聞こえる。


「……水が揺れる音?」


 ちょうど曲がり角が見えてきていた。

 モンスターがいる可能性が高いと、腰に携えている本を取り出して、慎重に角を覗いてみる。暗くてあまり見えないけれど、多分あれは少し大きめの魚かなにかだろう。

 地面に足を着いている様子はなく、スーッと水中を泳ぐ鱗を持った青い生き物。やはり海洋生物が出てくるらしく、先ほどの烏賊と比べると見劣りするような小ささだった。


「一撃でやれるかな……」


 恐らく苦戦をすることもないだろうけど、ここで魔法の無駄撃ちをすることはできることなら避けたい。雑魚敵だろうし、そこまでの心配もいらないかもしれないけれど、何せ火力には自信がない。

 ……やはりもう少し魔法を強化するようなスキルを取っておけばよかった。


「……ダメだったら叩こう」


 ぬめぬめしてたらやだなぁ。とかそんなことを考えながら、小さな声で呪文を唱え、標的である魚を狙う。

 あちらはどうやらこちらに気づいている様子はなく、悠々と泳いでいた。


「……ウインドカッター!」


 呪文の用意が終わると同時、角から飛び出した私は、しっかりと狙いを定め、頭目掛けて魔法を放つ。

 私が声を張り上げると同時にあちらも気づいたみたいだったけれど、振り向くと同時にその首は身体と離れ、冷たい石の床へと落下していった。


「よかった。やれた……」


 どのくらいの強さの敵かわからない以上、油断をするといつやられてもおかしくないため、一撃でやれたことに少し安堵しながら、倒した魚に近づいて、ドロップを確認する。

 こうしてみると切断面すごく綺麗に切れているけれど、なかなかにグロテスクな気がする……。


「……えっと、青魚の身。調理用かな……?」


 他にも皮やら、骨やらあったけれど、今すぐ使えるようなものはなかった。

 けれど、料理の幅も広がるようだし、その時が来たらとても面白いことになりそう……。


「……この調子でレベル上げ、しなきゃ」


 揃ってきた素材と獲得した経験値を見て、少し嬉しくなりながら、私は再度探索を続ける。

 魚を何匹か倒したころ、ずっと真っ暗だった世界に、一つの光が差した。

 暗闇にようやく慣れてきた目には少し辛く、目を細めながら近づいてみると、そこにあったのは木で作られた周りの光っている宝箱。


「…………眩しい。これが、当たり……のやつ?」


 顔を腕で覆いながら近づいて、眩く光るその箱に手を翳してみると、一瞬。輝きが増し、強く目を瞑る。

 目くらましのようなトラップかと思い、すぐに目を開けようとしてみると、そこは先ほどまでいた真っ暗な遺跡とはかけ離れた景色をした世界だった。

 水中であることは変わらないみたいだけれど、空が見え、太陽のような明かりも見える。周りは壁で覆われてなどおらず、広々とした空間に、水中だというのに木々や、草花が生えていた。

 狼もついてきていたけれど、先ほど目の前にあった宝箱はどこかに消えてしまっていた。


「……え、ここ……どこ?」


 何が起こったのか、理解することもできず、周りをきょろきょろと見回していると、後ろから、声を掛けられる。


「ここに来るなんて、珍しいお客さん。いらっしゃい」


 突如した声の主を探す様に、そちらを振り向くと、そこには女性の姿をした水色の、何かがこちらに微笑みかけていた。

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