白テイマーさんの外出
遅くなりましたーーー!!!!!
イベントやら体調不良やら、単純に書けなかったりで駄目だったんです。
すみません。一週間は越してないからセーフってことで……。
日も変わり、夜も終わりかけた刻。
私は、普段開かれることのない随分と重厚に感じられる扉をあけて、その景色を瞳に映し出す。
窓から見ることは多々あれど、こうしてその身で味わうのはいつぶりだろう。未だに見慣れないその景色は、いつもの明るさを失い、暗影に覆われていた。
溜まりに溜まった郵便ポスト、全然動かない入口の柵、塀を挟んで並ぶ家々、アスファルトでできた道路。色んなものに目を映らせながら、私はその世界へと足を踏み入れる。
「さむ……」
外に足を踏み出してすぐ、私はそんな言葉を口に出していた。
季節的にもまだそんな寒くないと思っていた私は、普段通りにフード付きの黒パーカーを一枚装着しただけの姿で外に出ていた。しかし、流石に夜中の、陽が見えない時間帯を舐め切っていたようで、鋭い夜風をその身に浴びて、少し後悔する。
けれど、外に出るだけでも少し億劫だというのに、今また家になんて戻ったら、私は多分もう出ようとしないだろう。
仕方がないので、歩きなれていない不慣れな振る舞いのまま、路を進んで行く。人通りはまるでなく、窓から見れるその景色とは別の世界な気がしてならなかった。
少し遠くを車が走る音が聞こえると、私は身体を震わせる。
人はいないというのにフードを深く、顔の半分ほどを覆うほどまでに被り、ひたすらに下を見ながら歩いていた。
ふと、携帯が震えたのを感じて、手に取ってみると、大量の通知と共に謝罪の文が送られていた。
「……怒っては、ないんだけど……なぁ……」
そんな言葉が闇夜に溶けていくのを感じながら、私は手慣れた操作で携帯をいじっていく。
一通りやることを終えた私は、フードを左手で支えながら、空を見上げた。
別に意味があったわけでもない。ただ、なんとなくそうしただけだった。
そこに広がるのは、綺麗な星空……なんかではなく、雲一つない空であったのに、うっすらとしか映し出されない星が煌めくなんとも虚な空だった。
「もう少し、田舎なら……綺麗な星空なのかな……」
別に星に興味があるわけでもない。だってこれは単なる気まぐれなんだから。誰にだって、そんな気まぐれを起こすことくらいあるだろう。誰に言うわけでもないというのに、そんなことを考えていた。
歩きながらに今日あったことを思い返していた。
「狼に……熊かぁ……」
それは、ゲームの中であったこと。単なるクエストの中のお話。
だけど、あんな話聞いちゃ、考えないなんて無理だった。
結局、あの後は、また散々に迷いながらも街に帰った。けれど、それ以上何かするなんてことは無理で、そのままログアウトをして、私は布団の中で頭を悩ませていた。
私をそこまで悩ませていたのは、今回聞いた話、よりももっと根底。モンスターについてだった。
「聞いてない、あんなの……」
それは、ゲームだと侮っていたからこそ、私の心を打ったもの。モンスターたちの物語だった。考えてみれば、当たり前のことでもあった。現実に私たち人間と共に動物が暮らしているのと同じで、ゲームの世界のモンスターたちにだって、それぞれの暮らしがある筈だ。
むしろ、それを侵害しているのが人間。いわゆるプレイヤーたちなんだ……。
でも、そうしないとゲームとしては、成り立たないし……そもそもゲームの中の生き物は生きていると言えるの……?
私自身、こんなこと考えるだけ無駄なことはわかっているけど、思考はそういう風に切り替わっていく。
だからこそ、私は一つ決断をしなければならない。
その熊を殺せるのかどうか……ということを。
「……駄目、答え出ない……」
ため息を溢しながら私は歩みを止める。
そもそも、私の予想が正しければ、熊というと、”あの熊”なのだろう。まず、倒すかどうかより、倒せるかどうかを考えた方がいい気がしてきた。
こうも考え事ばかりしていると、頭が疲れてくる。
「……甘い物でも、買おう」
結局、考えていた意味なんてないんだと、そう思わせるように、結論なんて出ないまま、私はそれ以上考えることを止めた。
そんなことをしていると、この暗い世界に建っていると違和感さえ覚えるほどに照明によって光が漏れだすお店が一軒、私の前に姿を現す。
ここが私の目的の場所であり、人類の英知の結晶。コンビニエンスストアである。
黄緑色、白色、水色で照らされたそのお店は、深夜だというのにも関わらず、煌々とその存在を周りに主張する。こういった時間でもやっているということを考えると、店員には頭が上がらなくなってくるけれど、使っている身である私からしたら、感謝しかなかった。
普段だったら、ネット通販以外使わないのだが、たまーにこうして夜中にやってきては大人買いして帰っていく。そんなことをしていた。
この店の利点は、他の店と違って、話しかけられることが極端に少ないのだ。そのため、私みたいな人種でも臆せず入ることができる。
店内は、時間帯のせいもあってか、レジに眠そうな店員が一人いる以外に人はいなく、私のとってはこれ以上ないほど最高の環境だった。
けれど、いつ誰が来るかもわからない。そんな状況で長居ができるわけもなく、必要そうなものを考えて、順に品物を揃えていく。
最初に陳列棚の中でも、お菓子やら簡易料理が並んでいるところ、次に飲み物、最後に少し冷気を出している店内でも涼しいデザート売り場と、一つ一つ見て回っては揃えていく。
大量のカップ麺、二リットルの水何本か、チョコレートケーキ一通りのものを二つの籠一杯に入れると、それをレジに持っていった。
店員には驚かれたけれど、たまにしか家から出ない身としては買い物はこれくらいが普通だった。
なるべく店員と目を合わせることがなくなるように、先程よりもさらにフードを深く被ったまま会計を済ませて、袋を貰い外へと出る。
「……重いっ」
いつも通りのことながら、非力な私の腕にはなんとも耐え難い重量をしているその袋を、どうにかこうにか持ち上げながら、来た道を帰路として、歩いていく。
たまに外の風を浴びるのも、まぁいいけれど、やっぱり買い物は通販に限る。
心から、そう思いながら。
別に外に出ないとは言っていないのです。
月に数回程度だけど。




