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白テイマーさんとシュークリーム


 俗にいうゲーマーという人たちは、私では想像もできないくらいゲームをやっているのだろう。

 よくそんなにやって疲れないものだ。

 連日、隙間時間にやっているだけの私は、肩を揉みほぐして、いつも通りにコンピュータを眺めていた。昨日、連絡を貰ってから結局そのままゲームには入っていないけど、流石にそろそろ行くべきだと思う。

 春兎さんがログインしているのかなんてわからないけど、いなかったら適当に時間を潰していればいいだけの話だし、あの人、いつもいるからそんなことはないと思う。



 そうして、また私はゲーム世界にやってきた。

 流石にそろそろ慣れてきて、この街も見慣れてきた。平日の午前ということもあって、全然人はいないけど。

 メニューを見てみると、唯一のフレンドである春兎さんは、普通にオンライン状態になっていた。あの人、働いてないのかな……。

 最早、自然に付いてくる狼を置いていかないように、少し歩を遅めながら私はお店へと向かう。

 それにしても、結局言っていたものというのは何なんだろう。私にわざわざ言うってことは多分従魔師用のアイテムなんだろうけど、一体どんなものなんだろう。

 そんなことを考えながら歩いて、お店までたどり着く。


 中に入ると、この間とは違う花のようないい香りが鼻をくすぐる。

 少ししか経っていないはずなのに、棚に並ぶ品は結構変わっていた。


「いらっしゃいお嬢さん、ここはアイテムショップ『ハル』だよ」


 カウンターを挟んだ先に立っていたのは、私がこのゲーム内で唯一顔見知りだと言える春兎さんだった。


「……それは一体?」


「あれ、知らない? 昔のゲームでよくあるNPC(ノンプレイヤーキャラクター)の真似なんだけど」


 それは知っている。いくらゲームをそんなにやらないとは言っても、これでもネットの住民だ。聞きたいのはそうじゃない。


「いえ、なんでそんなことやってるのか、と……」


「面白いから」


 親指を立て、ぐっと拳を握った手をそうして私へと向ける。

 この人色々と楽しそうだな……。


「他の人にもやってるの……?」


 別に気になったわけでもないけど、ふと私はそんなことを聞いてみる。


「えっ、なにヤキモチ焼いてくれてる!? 安心して、しらゆきさんが初めてだよ。そもそもこの店過疎ってるから!」


 顔がうざかった。

 そして、言ってることも。聞かなければよかった……。

 頭を抱えて、嘆息を溢す。そうして私はなんとか平静を保とうとする。


「それはない……ていうか、そんな自慢気に言うこと、では……ないのでは……?」


「おっと辛辣、だけどそれ他の男の人にはやらない方がいいよ、逆効果だから。店が過疎ってるのは別に悪いことじゃないんだよ、こうして寛げるからね」


 逆効果の意味はわからないけど、一応受け取っておくとして、今日私が来たのはそんなことではない。

 そうして、話を切り出そうとすると――。


「あの……」


「あっごめん、今適当に飲み物用意してくるよ。お茶でいい?」


「えっ、あっ……はい」


「そこの椅子にでも座って待ってて」


 そうして私は指示に従うしかなかった。


「……はぁっ」


 なんで私はこんなに自分の意思を伝えることもできないんだろう……。いや、そんなこと考えなくてもわかる。

 だから、私はこんな私が嫌いなんだ。

 椅子に腰かけると、待ってましたと言わんばかりに狼は、私の膝に飛び乗り、丸くなる。

 最近、この子はこんな風に心を許してくれるようになっていた。嬉しいけれど、なぜかこのゲーム、足が痺れるという機能まで実装している。この間、油断してしばらく悶える羽目になった。運営さん……なぜだ。

 だから少し気をつけるようにしながら座って毛を弄っていると、奥から木のお盆のようなものを持って春兎さんがやってくる。


「お待たせ、今回は日本人の味方。緑茶になります」


「あ、ありがとう……」


「お茶請けはまったく関係ないシュークリームだけどね。さ、まずは寛いでいってよ」


 置く場所がないということで、春兎さんは木のテーブルを目の前に出す。出し入れ自由ってすごい。

 反対側に、カウンターの奥にあった小さな椅子を持ってきて、私と対面になるようにして座る。

 お店の中でこんなことを平気でするくらい、本当に過疎っているのだろう。


「食べ終わったら、言っていたもの見せるよ。俺が作った自信作だから。よかったら感想くれると嬉しいな」


 そう言って差し出された緑茶とシュークリームは、目の前にしただけで、現実と何も変わらない。そう思わせるくらいに現実的な匂い、見た目だった。

 シュークリームを手に取って、勢いよく口へと運ぶと、口の中全体にふわふわとした生地の柔らかさと、クリームの甘味が広がっていく。


「……おいしい」


 シュークリームなんていつから食べていないのだろう。

 いや、そもそも甘い物さえ久しぶりな気がしてくる。ここ最近ずっとおやつかラーメンくらいだったから。


「よかった。作った甲斐があるよ、結構この世界での料理凝ってて、面倒くさいんだ。それが面白いんだけど」


 春兎さんが言うにはそれが理由で趣味スキルとしては調理が人気あるとのこと。

 確かに、これは人気が出るのも頷ける。取ってよかった。調べてこれも挑戦してみたい。

 ぱくぱくと食べ進めて、すぐにシュークリームはなくなってしまった。魔性の甘味だった。恐るべし……。

前回載せるはずだった成長したキャラのステータスです。素で忘れてました。申し訳ないです。

またなんかミスあって直すかもだけどご了承願います。

作者やらかしすぎですね。

『しらゆき』従魔師Lv5

 HP70/70 MP70/70

 所持金1250ジュエル

 スキル:スキルポイント4

 【破壊:   2】

 【創造:   1】

 【本:    3】

 【風属性魔法:2】

 【鑑定:   1】

 【調理:   1】

 【採取:   6】

 【意思疎通: 2】

 従魔

 ・白狼ホワイトウルフ

 技能

 ・テイム

 ・ウインドカッター

 ・指揮

 ・ポイズンブリーズ

 ・詠唱省略

 称号

 ・初心者

 持ち物

 ・ダイヤモンドの欠片x12

 ・林檎x28

 ・薬草x14

 ・きのこx10

 ・木材x30

 ・土x20

 ・スライムの核x1

 ・スライムの粘液x20

 ・毒牙x20

 ・毒蛇肉x3

 ・HPポーションx10

 ・MPポーションx10

 ・初期装備一式

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