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苦渋の折衷案①

第二の特異点管理国、ベロニカに入国して二日目の朝。


水平線に黒々と轟く嵐は昨日と変わらないものの、ベロニカの空は快晴だった。


穏やかな陽気に自然と目を覚ました俺とディアナが身支度を整えていると、起床を察したらしい使用人さんがノック音と共に顔を覗かせた。


何人もの女中さんがぞろぞろと表れ、瞬く間に食事の用意が為された。

客扱いされているゆえか、用意されたスープやパンなど、メニューは簡素ながら素材はかなり上等なものばかりだった。


口に入れるのに抵抗のある色合いだった果物類とは違って、馴染みある見た目の料理を頂いたあと、俺とディアナはアイリスの工房へと向かった。


道中、王のいる玉座の間にも寄り、簡単に挨拶を済ませておく。

今日の予定を聞かれたので、アイリスに魔晶鋼の加工を相談するつもりだ、と答えておいた……本題は別にあるけど、まあこれも嘘じゃないからいいよな。


そうした経緯ののち、昨日拉致された部屋の扉を叩いたのだが、返事がない。


「……お留守なのでしょうか?」


控えめに戸を叩いたディアナが首を傾げた。

交代して、俺がやや強めにノックするも、やはり応答はない。


「案外まだ起きていないって可能性もあるな」


スマホを取り出して見ると、地球時間で八時頃を示している。エーテルリンクの時間帯は地球と大きく離れていないようだから、ほぼ同じくらいだろう。

休日なら昼過ぎまで眠り込むような人もいるし、彼女もそのパターンなのかもしれない。今日が休みの日なのかは知らないけど。


一度客間に戻って時間をつぶすか、と踵を返そうとしたところ、通りがかった兵士さんと目が合った。


「おや、アイリスに用事? この時間なら、城の中庭を走り込んでると思うよ」


「は、走り込み?」


「うん、なんでも、『あいどるは体が資本ですので!』とか何とか言って、わざわざ陛下に許可も取ってるらしいね。ああほら、あそこに見える」


廊下に空いた石造りの窓から、兵士さんが眼下を指さした。

見ると、学校のグラウンドほどもある城の中庭を、外周ぎりぎりに沿って走る人影が見える。

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