副業:アイドルの魔法少女⑪
「と、ところで、ディアナはあいつの話どう思う? 応じるべきだと思うか?」
俺の問いに、一瞬で冷静な面持ちに戻るディアナ。その様子を見てようやく、俺も彼女に向き直る。
「そうですね……見たところ、あの魔法陣は本物のようでした。転移先が荒天島と断定はできませんが」
「そうか……うーん、嘘を言ってるようには見えなかったんだけど……うーん!」
腕を組んで渋面を作るが、当然答えは出ない。
そんな俺とは対照的に、ディアナは迷いのない様子でこう答えた。
「ですが、マスター。本心では、既に決断されているのではありませんか?」
「……え?」
「向かいたいの、ですよね。白風瑠奈嬢のライブに」
「そりゃそうだけど……でも、それで俺やディアナが危険な目にあっちゃ、ダメだろ?」
港でのやり取りを思い出す。あの時の言葉は、俺の中ではかなり大きなものになっている。
もう、相棒を泣かせるような真似はしない。したくない。
そう考えると、得体の知れない提案や裏のありそうな誘いに、おいそれと応じるわけにはいかない。
そんな意図を込めた俺の返答に、しかし銀白の少女は再び首を横に振る。
「いいえ、大丈夫です。マスターなら……港でのお話を、しっかり意に留めて下さっている、今のマスターの判断なら」
「ディアナ――」
そうだ。彼女は俺の選択肢を縛ろうと思って、その身を案じろと涙を流したのではない。
先へ進むために、前へ踏み出すために、自身を蔑ろにするなと、そういう意味を込めていたのだ。
「答えを出すために、迷うこともあると思います。ですが、その時はどうか、私を頼ってください。私は貴方様の響心魔装なのですから」
「……ああ、ありがとな」
「今のマスターがお決めになったことであれば、私は喜んで従いましょう。あ……勿論、暴走が明らかな場合はお止め致しますが」
「ははっ。そうだな、そんときは頼むよ」
熱を出しかけていた頭が急速に冴えわたっていく。
さながら荒天島の嵐の如く猛威を振るっていた情報たちの、奥底に沈んでいた意識がゆっくりと浮上してくる。
「……答えは、お決まりでしょうか?」
「ああ」
ディアナのおかげで思い出した。
俺がディアナに最初に出会ったとき、彼女にかけた言葉を。
――そうさ。俺は絶対に行くんだ……ルナちゃんのライブにな!
「明日は早い! 今日はもう寝るぞ、ディアナ!」
「はい、マスター。マスターの御心のままに」




