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星との出会い⑩

この曲を初めて聞いた俺は、一人自室でさめざめと泣いた。


そのままの自分で良い。周りなんて気にしなくていいんだ。と、何かが許されたような気がした。


ぼんやりとした、暗く狭い灰色の世界が、色付いて、広がった気がした。



その日から俺は、ルナちゃんの軌跡を追い始めた。



俺の知らない、彼女のデビューシングル、セカンドシングルを購入。

今までどんな活動をしてきたのか、これまでの経歴や彼女のプロフィールを繰り返し読んで暗記。

今後の活動や出演予定の番組、イベントを入念にチェック。


そして、それらを行うために日々も変わり始めた。正確には、俺自身が変えていったのだけど。


発売予定の写真集やCDを購入するため、アルバイトを始めた。


アルバイトに向かうためや、ルナちゃんの出演する番組をリアルタイムで視聴するなどのために、いじめっ子たちの呼び出しや囲い込みを避けるべく画策するようになった。


アルバイトでの稼ぎをいくらか家に入れるようになった。


給料をカツアゲしようとしてきた奴や、突っかかってきた奴には反撃するようになった。


結果俺は、見事なルナちゃんファンと化し……学校では、イジメられる頻度が激減した。


まあ、友達はできちゃいないし、今でも私物を隠されたりすることはあるが、それを気にしないメンタルを持つことが出来たと自負している。

一応今はルナちゃんのことを応援し続けるという勝手な目標も掲げているし、両親にも安心してもらえた節があるし、それなりに満足した生活を送れている感じだ。


これで俺の話は終わりだけど……


「まあ、そんなわけで、俺はルナちゃんのライブに是が非でも参加したいわけなんだよ」


「…………」


ディアナは口を噤んだまま目を伏せている。さっきよりかは緊張もほぐれている様子で、畏まっているというよりは、流れていた曲に耳を傾けているように見える。


相棒の言葉を俺も無言で待った。反応を催促するような真似はしない。

きっと、ルナちゃんの曲と、俺の話とをゆっくり噛み砕いて理解しようとしてくれているのだろうから。


流れる沈黙に、港に打ち寄せる波音だけが(いろどり)を添え、少しの時が流れ。


銀白の少女は音もなくその真紅の双眸を上げ、俺を見据えた。


白風瑠奈(しろかぜるな)嬢は、マスターの、世界を変えた方なのですね」


「良いこと言うなぁ。そうだな。うん、その通りだ」


「私にも、理解できます。今まで空虚だった自分に、意味を与えてくれた存在……その方への感謝の念は、言葉では説明しきれないほどに大きく、強いものであると」


「おっ、分かってもらえたか! いやー、さすがディアナだな!」


「恐縮です」


ディアナの的確な表現に、付け加えることのない俺はただ腕を組んで頷くだけのマシーンになっている。才色兼備とはこのことだな! ……とか言っても通じないかな。

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