星との出会い④
……できれば話したくは無かったんだけどな。
先の己の行いがフラッシュバックする。危うく、俺の事情には直接の関係がない、ディアナをも死の危機に晒した事実を。
「……そんなに面白い話じゃないけど」
それでも聞きたいか? 言外にそう訴える苦し紛れの言い逃れに、ちらりとディアナに視線を戻す。
果たしてそこには……むしろ、かつてなく一心に俺の言葉に耳を傾けんとする相棒の姿があった。
ディアナはこくり、と小さく顎を引き、ピンと背を伸ばした正座姿で俺の言を待っている。
無茶に突っ走ったことを叱られた、さっきの今で、また怒らせちゃうかもしれないけどなぁ。
ポリポリと後頭部を掻く。己の過去を話すのは、なぜどこか気恥ずかしくなるのだろう。
ディアナの真っ直ぐな双眸に目を合わせながらでは、とてもじゃないが言葉が続かない。俺は斜めに視線をズラし、どことも知れない明後日の方向に目を向けた。
俺がルナちゃんのライブに行きたいのは、まあよくある理由さ。そう前置いて、俺は口を開いた。
「結論から言うと、俺は地球にいたころ、とある事情で周りの奴らからイジメられててさ……いよいよ耐え切れなくなって、もう死んじゃおうかな、って思った時に、ルナちゃんに出会って、思い直して、救われたんだよ」
だから、そのお礼っていうか、できるだけのことをして、彼女を応援し続けるって決めたんだ。
それだけさ。
句切れの一言を述べると共に、ディアナの真紅の瞳を見据える。
俺の言葉に嘘偽りがない、本心からの言葉だと伝わるように。
俺の視線を受け止めたディアナは、そのまま無言でじっと俺を見つめ返してきた。
三〇秒ほども沈黙が続いただろうか。体感ではその倍以上の時間の経過を感じた時、眼前の少女がその小さな口を開いた。
「いじめられていた、とは……周囲の人間に、虐げられていた、という、ことでしょうか」
耳にした言葉の意味を充分に理解するためか、ゆっくりと呟くディアナ。
そんな彼女に合わせ、俺自身もスローペース気味に応じる。
「うん、その認識で間違いない」
「その原因はもしや、マスターが魔素を見ることが出来る、ということに関係してはいませんか」
そう続けたディアナに俺は驚きを隠せなかった。
目を見張って息を呑んだ俺に、ディアナはどこか得心した様子だった。
トレイユの霊山からの脱出時。あの僅かなやり取りで察したのか……改めて、目の前の少女が、その幼い容姿から想像もつかないほど、頭脳明晰で理知的な思考を巡らすことが出来る才女であると実感する。
「ああ、その通りだ。俺は向こうでは、幽霊、って言って分かるか? かつて死んだ人の魂。それを見ることが出来たんだ。イジメられたのはそれが原因で……こっちの魔素が見えるのも、たぶんそのせいだと思う」
真摯に耳を傾けるディアナ。彼女へ向かって紡ぐ己の言の葉には、有無を言わさず俺の苦い過去が引っ付いてくる。
腹の内側にじわりと滲み出す、黒く毒々しい感情を必死に追いやりながら、俺は数年前の『俺』のことを脳裏に思い描いた。




