星との出会い②
出会ってまだ数日ばかりの俺に対し、どうして彼女がそこまでしてくれるのかはわからない。
それでも、ディアナは真剣に俺の身を案じてくれている。
今の平手打ちも、両の瞳いっぱいに溜まる涙も、俺が自らの命を粗末に扱ったことに諫言しているのだ。
また、間違えるところだった。
相棒への謝罪の念は変わらない。
けれど、『何について』謝罪するのか、もう俺は間違えない。
「すまなかった、ディアナ。自分から死にに行くようなことをして」
「……はい」
「そして、ありがとう。俺を助けてくれて……俺のことを、心配してくれて」
涙がこぼれ落ちそうになるのを懸命にこらえ、泣くまいとするディアナに向かって微笑みかける。
俺の気持ちが伝わるように。
ごめんなさいとありがとうを込めて。
「また、一人で突っ走っちゃうかもしれないからさ。その時は、遠慮なく叱ってくれよな」
「……はいっ、お任せください。私は、貴方様の響心魔装ですから」
そう言って後頭部を掻くと、ようやくディアナもほんのりと笑みを浮かべてくれた。
遂に彼女の目から一滴の涙がポロリと落ちた。慌てて俺は右手を伸ばし、人差し指で拭い取る。
って、今気付いたけど、ディアナもびしょ濡れでボロボロじゃないか。
俺を救うときに海水にまみれてしまったのだろう。ディアナの漆黒の服は水を吸って殊更に黒くなり、彼女の肌にぴっちりと張り付いていた。元来細身な彼女のシルエットをより際立たせている。
透き通った白銀の髪も、海水に濡れて頬に張り付き、半端に乾いたせいで荒れてしまっていた。いつもならピンと姿勢よく立っている狐耳も萎れて項垂れている。ダメ押しに、さっきのやり取りで泣かせてしまったことで、目まで腫れていた。
ディアナの整った容姿といえども、若干の陰りを見せてしまっていた。
相棒にこんな格好させたまま気絶してたのか俺。さっきとは別の意味での申し訳なさが顔を覗かせる。
ディアナの現況をじろじろとチェックしていると、きゅっ、と両手で身を引き寄せた彼女が呟いた。
「あの、マスター。あまり見ないで頂けると……」
「え、あ、ああ。ゴメン!」
うわあ今の俺ただの変態じゃん!
乱れた格好の女子を舐めるように見るとかさ!
慌てて上着のブレザーをディアナに羽織らせた俺は、地面に胡坐をかいたまま九〇度横に急速旋回した。
あーもう今日の俺最低じゃん……いろんな意味で。
肩口のブレザーを見慣れなさそうに眺めた後、顎を沈めるディアナ。
その様子を視界の端に写しながら、俺は溜め息をついて肩を落とすのだった。




