異世界特有のご都合環境⑨
三! 四!! かげつ!!!
聞き間違いだよな!? 聞き間違いだと言ってくれ誰か!
困った様子で目を伏せるベロニカ王の横で、音もなく身もだえする俺。そんな俺の様子を見かねたのか、ディアナが慌てて王へ問いかける。
「そ、その期間は確かな記録によるものなのですか? 最短でも三ヶ月は待たねば絶対に嵐は晴れないと?」
「ふむ……正確には数ヶ月も待てばおそらくは、というような感じですかの。先ほど申し上げた期間は、過去の渡航回数を単純に平均して割り出したものですからなあ。嵐が晴れるのは一定の周期ではなく、完全に不規則なのですじゃ」
「ということは、場合によっては三ヶ月どころか」
「年単位で待たされることもあり得ますなあ、可能性としては」
クソッッッッ!!!
国王の無情な一言に耐えられなかった俺は、膝から崩れ落ちバルコニーの床に拳を叩きつけた。
わなわなと肩が震え、やり場のない憤りが全身に広がっていくのがわかる。
「マ、マスター。お気を確かに」
「そう落ち込みなさるな、ユーハ殿。記録によれば、数日とおかずに複数回嵐が晴れた例もあります。運が良ければ明日にも島に向かえるやも――」
ウン……? ああ、運。運ね……
そんなのがあったら、過去最高に待ち望んでいたライブを一ヶ月後に控えた、このタイミングで異世界に呼ばれたりしないんですよ。
「ふ、ふふ、フフフ……」
陰のある笑みをこぼしながらゆらりと立ち上がる。
おろおろと両手を泳がせるディアナの姿、純粋に不思議そうな瞳で見つめてくる国王を順に見てから、俺は水平線の特異点を睨みつけた。
ずかずかと大股で石造りの手すりににじり寄り、勢いよく両手を付く。
そして、溜まりに溜まった不満を猛らせた。
「……そぉんなに待ってられるかぁ――――――!!!」
……これは後から聞いたことだが、この時の俺の叫びは城下の街まで届き、一瞬、国民全員が同時に城を仰いだそうだ。
そんな鬨の咆哮を間近で聞き、どうやら耳鳴りを起こしてしまったらしい相棒に、グルン! と急回転して向き直る。
「ディアナぁ!!!」
「はっ、ハイ!」
「行くぞぉ!!!」
「お、御心のままに!」
俺の有無を言わせぬ気迫に押され、ディアナがその身を変じさせる。
「……ほ!? もしや、今向かう気ですかな!? 荒天島に!? 無茶ですじゃ――ひょっ!?」
瞬く間に夜色の鎧姿と化した俺は、自身で意識できる限界の心素を両足の魔法陣に込め、彼方の曇天目掛け飛び出した。




