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異世界召喚はいつも突然だ⑦

「うむ! そなたならきっと引き受けてくれると思っていたぞ!」


「いやぁよかったよかった! これでこの世界、ひいては我らが国も安泰だよ!」


「早速だが、我が国トレイユにおける特異点は、城壁外にそびえる霊山の火口湖にある」


「そこのバルコニーから見えるだろ? 結構高いよねアレ。まあ、異世界人の君の身体能力はそもそも高いんだけど、この世界に召喚された際に底上げもされてるはずだから、登山くらい楽勝さ! 気軽にササっとよろしくね」


おい。人が色よい返事をした途端にマシンガントーク再開するのやめろ。一気にやる気無くすわ。

しかも何気に重要事項も言ってただろ。あの山の頂上にあるだって? デカすぎててっぺん見えないんですけど。雲にぶっ刺さってるんですけど。


あと、霊山って、まさかとは思うけど。


「幽霊、とかいるのか。あの山に」


「うん? ああ、霊山の霊というのはね、君らの世界でいう幽霊や怨霊の類いのことではないよ。特異点とまではいかずとも、環境的に魔素を集めやすく、魔素を帯びた動植物の生態が見られる山のことを指しているのさ……ひょっとして君、お化け苦手なのかい?」


女王サマが吹き出しそうになる口を手で覆うのを俺は見逃さなかった。

素早くにらみつけてやるも、瞬時に鉄面皮をかぶってやがる。こいつ。


別に怖くなんかない。ただ……


「……こっちにも幽霊がいるのか、と思っただけさ」


「え? なんだって?」


小さく呟いた独白は、サンファの耳には届かなかったらしい。

それでいいさ。いや、その方がいい。


話したくない。


「なんでもない」


「そうかい? ならいいのだけど。

 さて、それじゃあこれから世界を救いに旅立つ君にとっておきの武器を与えよう! ここ、エーテルリンクは、君の暮らしていた世界には存在しなかった危険な生物が息づく場所だ。そんな世界でも道を切り拓くための力と、指針を授けようじゃないか――」


「いらない」


いかにも魔術師らしく、バサッと大仰に腕を広げて空高く杖を掲げたサンファを横目に、俺はバルコニー横の一人の兵士に歩み寄った。


兜のせいで表情は見えないが、いきなり近寄ってきた俺に警戒心をあらわにする兵士さん。

別にいきなり怒鳴りつけたりしないのに。どっかの女王じゃあるまいし。


それより、その手に持ってるものが欲しい。


「この槍だけ貸してくれる? 兵士さん」


木製の柄に鉄製の刃先が付いた、シンプルな造りの槍だ。

王を守護する兵士が持つものとしては頼りないように見えるが、彼が腰に帯びる剣や身に着けている甲冑の使い込まれ具合を見るに、この槍は兵士さんのサブウェポンなのだろう。


借りちゃっても別にいいよね。


「え、あ、ハイ」


「どうも。じゃ、行ってきます」


あっさりと借り受けた武器を手に、俺は玉座のバルコニーから異世界の街へと飛び出した。

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