異世界特有のご都合環境⑦
王城の最上階。謁見の間にて、国王の椅子に坐するベロニカ王と、俺とディアナは直立した状態で向かい合っていた。
室内には壁際に沿うように兵士たちが並んでいるが、トレイユほどの緊張感や剣呑とした様子はない。こうしたところにも、ベロニカがトレイユより穏やかな国性であるように感じられる。
「いやぁ~ようこそおいでくださった、ユーハ殿! 此度は我らが世界のために、勝手を押し付けて申し訳ありませぬ……!」
ベロニカの国王は、恰幅の良い白髪交じりの男性で、大変好感の持てる方だった。
国王ゆえに王冠を戴き、豪華なマントや衣服を身に着けてはいるものの、隠しきれない人の良さオーラがその身から漂ってくる。
今の発言にしても、社交辞令とか取り繕った言葉とかいう雰囲気は無く、本心で遺憾の意を示しているのだと伝わってくるほどだ。
「遠話の魔法にてサンファ殿から伺ってはおりましたが、お早いご到着でしたなあ。まだこちらに召喚されてから四、五日ほどでしょう?」
「いやまあ、急いでますんで……ところで、この国の特異点はどこです? すぐにでも向かいたいんですけど」
「むぅ、これからすぐにですか? それは難しいですな……」
手短に用件を伝えると、ベロニカ王は急に悩ましげな表情になった。口をへの字にし、顔をしかめる。
「? 何故? ベロニカの特異点は、無人島だと聞いていましたが」
「おお、ご存知でしたか。その島は、この部屋から見えるのですが……おい」
王がバルコニー付近にいる兵士を下がらせた。そこから特異点のある島が臨めるということなのだろう。わざわざ自身で先導してくれる王に続き、俺とディアナはバルコニーに出た。
「あちらですじゃ」
王が指し示したのは港の方角だった。船の多くが漁に出ているのか、空きの目立つ停泊所。その先に広がる、太陽光を反射してきらめく海面。青く伸びる水平線付近に、一か所だけ、黒のマジックペンで塗りつぶしたような、どす黒い一角が見えた。
あれって、空にずんぐり鎮座してるの、積乱雲だよな。
その真下の、もはや黒くてよくわかんないけど、あれ豪雨になってるよな。あっ今光った。雷雨じゃん。
……嘘だろ。
「もしや……ベロニカの特異点は、あの大嵐の中にあるのですか?」
言葉を失った俺の代わりに、ディアナがベロニカ王に疑問を投げかける。
王は額のシワを一層深くしながらため息をつき、頷いた。




