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推しアイドル『たち』のライブ前に異世界救っていきませんか?

――その三人の姿を見た途端、俺の思考は限りなく無限に引き延ばされた。


クロックアップした脳内で色鮮やかに蘇るのは、この世界に()び出され、今日という日を迎えるまでに過ごしてきた記憶の数々。


それはもう……とにかく色々なことがあった。

時間にすれば、僅か三か月弱ほどの短い日々で、その中でも更に、エーテルリンクでの魔晶回収の日々などに焦点を絞ればもっと短い期間になる。


だけど、今なら言える。さっき、舞台裏で、サンファと話していたときにも思ったことだけど。


この日々があって良かったんだと。

この日々のおかげで、今の俺が、今俺の目の前に広がる光景が、あるんだと。


涙がこぼれそうなほどに美しい。愛おしい舞台。

煌めくステージで、ステージという名の『空』で、ライト以上にその場を輝かせる三人の少女を、見る。


(ディアナ)と。

太陽(アイリス)と。

(ルナちゃん)が。


一堂に会し、弾けるような笑顔で、ステージの上から客席に向けて手を振っている。


まだ、三人のうちの誰一人として声を発していない。ただ登場して、笑顔を見せて手を振っているだけなのに、それでも既に、会場は割れんばかりの歓声に包まれている。


思い思いの足取りでステージを周り、客席の隅から隅まで笑顔を届けた三人は、あるタイミングで立ち止まる。


向かって左から、ディアナ。ルナちゃん。アイリスの順に並んで立つ。

中央のルナちゃんが、静かに右手のマイクを持ち上げ、



「私たち――」



「「「――『空に輝け(シャンティナイツ)』ですっ!!!」」」



名乗りと同時、舞台上に据えられたスピーカー型の魔導機器から、大音量のイントロが流れ始めた。

聞き間違えるはずもない、ルナちゃんのデビューシングルのイントロだ。一曲目はこのデビューシングルを三人で歌うんだ。


……裏のドルオタ談議に混ざれなかった理由。俺は誰を推しアイドルとすべきか、という問題に、今なら胸を張って即答出来る。


全員(・・)だ。


ディアナも、アイリスも、ルナちゃんも、疑いようもなく、俺の推しアイドルなんだ!


そうとも、俺自身そう自覚していたじゃないか! 推しは増えるもの。一人だけにしなきゃいけないわけじゃない! きっと祭賀氏や赤上さんは、そのことをとっくに理解してる!


俺が戦ったのは、世界のためなんかじゃない。巨悪を許さない正義の心があったわけでもない。


他でもない、俺の推しアイドルたち(・・)のために。

推しアイドルたちが、アイドルとして輝く未来のために。


その未来を、そのステージを、誰よりも近くで見届けるために――!


……まるで、一瞬の出来事のようだった。

究極に引き延ばされ、走馬灯のように駆け巡った過去の記憶。そして、たったいま再認識した自分の中の信念。その心の自覚が故か、三人が一曲目を歌い終えたのが、瞬く間だったように感じる。


その、三人の、言葉では言い尽くせないだろう程に、楽しそうな表情を見て、もう一度、心を新たにする。


そうさ。推しアイドルたちのライブのためだったら――異世界だって救ってやるさ!


歓声と拍手に包まれる壇上で、呼吸を整えた三人が、声を重ねる。




「――みんな! 今日は、来てくれてありがと―――っ!!!」









『シンクロ・デバイス ~推しアイドルのライブ前に異世界救っていきませんか?~』

完結


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