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異世界特有のご都合環境⑤

「マスターをはじめ、異世界より召喚された方々は魔素・魔力を持たない……あの女性からは、確かに魔素をその身に取り込むのを感じます。エーテルリンクの人間と見て間違いないでしょう」


俺はとある体質のために、空気中に充満する魔素やその動きを目に見ることができるが、ディアナたちエーテルリンクの人々には魔素は目に見えない。第六感のような、言葉では言い表しがたい感覚で感じ取っているそうだ。


その感覚は、注視しなければ判別できない俺に比べて遥かに鋭敏なようだ。それとも、ディアナ個人の察知能力が優れているのかもしれないな。


……今気付いたが、広場で遊んでいた子供たちや、ゆっくりと時間を過ごしていた街人の姿が見えなくなってるな。正確には、広場にいることにはいるのだが、金髪の少女に対して露骨に距離を取って、外周付近の建物に身を寄せている。


しかも、なんでか彼女を睨んでいるように見える。


いつの間に離れたのやら、曲がりなりにも少女のライブに参戦しているのは俺とディアナの二人だけになってしまっていた。その俺たちも、噴水前の少女と二〇メートルくらい離れたところにいるんだけど。


金髪の少女はMCを一区切りしたらしく、いよいよ歌のパートに入ろうとしているところだった。


「それじゃーさっそく始めるよ! 一曲目はー、みんなお馴染みの『渚の魔法少女』!」


曲名を声高に告げた少女が、彼女のテーマソングなのだろうか、ハイテンポのナンバーを歌い始める――


『うっ!?』


途端、俺とディアナは同時に顔をしかめてしまった。


ひ、ひっでぇ音痴だ!


その眩しさすら感じる笑顔から紡がれるとはとても思えないほどに音程が外れている。元の曲調を一切知らない俺でも、ワンフレームも合致していないと分かる。


まるで異なる言語圏の文字を雑多に混ぜた後、鏡文字にして早口で読まされたような不快感だ。


そのくせ声量は一級品なのかよ! 結構離れたところにいる俺たちでさえも、思わず耳を塞ぎたくなってしまう。なるほど、さっきまで広場にいた人たちが退避したのはこれが原因か!


しかし、俺もディアナもその場を離れようとはしなかった。ディアナもその全身をこわばらせ、少女の歌声にこらえている様子だったが……少女のダンスパフォーマンスの凄まじさが俺たちを逃さなかった。

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