星を駆ける⑧
意識が覚醒した当初、サンファは己が霊となっていると知りつつも、自身の慕っていた地母神を討ったのが俺たちだと知って、呪い殺そうとしてきた。虚飾無しに、そのままの意味で。
そのサンファの妄執は凄まじく、幽霊の存在が知覚出来ないルナちゃんや祭賀氏などの面々にも、明確な殺気を感じ取ることが出来たほどだった。
……が、霊体故に実世界の人間へは干渉出来ないという事実を知り、しばらくの時間を費やして、やむなく矛を収めたようだった。それでも尚、敵対心と言うか、俺たちへの嫌悪感はそのまま残っているようだが。
それと、サンファがしぶしぶ俺たちへの殺意を収めた理由がもう一つある。こいつの魂が無事だと分かったのち、アーツやスプリングロードゥナなんかと相談した結果決まった、サンファの今後の身の振り方について。
それが、欠けた神の後継――つまり、地母神の後釜だ。
神位魔術師の中でも古株であり、一時、天空神アーツにも迫る場所まで登りつめようとしたサンファの実力は、既に地母神の後を継ぐに充分なものだったし、サンファ自身『その役目は自分以外には務まらない!』と声高に言い張ったこともあって、どうにか俺たちを憎むだけのところから一歩前進したのだった。
サンファの気持ちは……分からないでも、ない。
だって俺自身も、一時期はこいつを憎んでいた、と言っても良いかもしれないのだから。ルナちゃんの初ライブが一ヶ月後に迫っている中、勝手に異世界召喚しくさりやがって、という感じで。
けれど……今考えると、それも悪いことばかりでは無かった気がする。まあ、結果論なんだけど。
サンファに異世界召喚されていなければ、俺はディアナに出会えなかった。アイリスと知り合えなかった。リラと共に居られなかった。そして、ルナちゃんと今のような関係を築くことも無かっただろう。
かけがえのない仲間たちに出会えたのは、癪なことにこいつのおかげでもあるワケだ。
ほんっとーに癪だけど。絶対口に出して言ったりなんかしないけど。
だからまあ、よろしくと言われてしまったからには……少しはこいつの面倒を見てもいいかな、という気持ちでいる。
「ホラ、ノーパソに入って話して来いよ。共有なんだろ、ハーシュノイズと」
『それも混ざりたくない理由の一つだよ!! せめて別々に分ける気遣いくらいあってもいいと思うけどねぇ!?』




