星を駆ける②
何かがおかしい。自分の予期しない何かが起こっている。
違和感の原因を確かめるべく、創星神は拮抗し続ける惑星と夜色の波動との接触地点へと急降下した。
もしや、見込み以上にエーテルリンクの強度が高すぎたのか? いや、そうだとしても、奴らの心技は一点突破の威力に集中させた形状をしている。仮に星全土を砕くのに劣っていたとしても、一点を貫通させることも出来ないのは明らかにおかしい――
「――ッ!! これは……!」
そこで目にしたのは、創星神も予想していなかった光景。
超巨大な夜色の五芒星から成る見たことも無い魔法陣。そこに、弾丸たる惑星が呑み込まれていく姿だった。
「これは……これは、まさか、異世界召喚魔法陣……!? 馬鹿なッ!」
私と同じ、いや、逆に、送り還す魔法陣。
破壊するのではなく、撃破されるのでもなく、元あったところへ送り還すためだけの心技。
いや、その理解も違う。これは単なる魔法陣ではない。あの地球人、白風祭賀が創り出した、魔素と心素の両方を燃料に絶大な効果を発揮する、心因魔法陣と呼ばれる特殊な陣だ。
そこに、あの少年の馬鹿げた心素を起点に、魔装の少女をはじめとした僅かな魔素と、地球中のニンゲンどもの心素が、惜しげも無く注ぎ込まれている。
そして、それだけではない。
この魔法陣に、夜色の五芒星に注がれている心素は、地球のニンゲンたちのものだけではない。
こうして傍にいるだけで伝わってくる。この心因魔法陣に、エーテルリンクのニンゲンどもの心素も送り込まれているということが。
それは、創星神にとって驚愕を越え、信じられない事実だった。
エーテルリンク人の心素は、地球人のそれに比して遥かに少ない。更に、魔法という技術が万人に普及している。故に、心素の扱い方を心得ているニンゲンというのが、そもそも少ない世界だ。
そんな世界から放出される心素量が、地球のニンゲンどもの心素に遜色ない量であるという事実は、創星神にとって信じられない、信じがたい光景だった。仮にもその世界を創造した神の一人であったが故に、尚のこと。
何故、どうしてこれだけの量の心素を解き放てる。その心素を、何が起こっているかも理解出来ないところに向かって、惜しげも無く投げ放てる。どうして。どうして。
理解が追い付かない。何が原因で、どこから手を付けるべきなのか。
「まさか、まさか……ッ!」
その閃きは直感に近いものだった。
今この展開に至っても、性懲りも無く響き続ける歌声。
同じ歌を繰り返すように歌い続ける少女らの旋律。
まさか、この歌が。
『アイドル』が――ッ!!
遅まきながら察した元凶を排除するべく、惑星の召喚軸に使い、その役目を終えていた白鍵を呼び戻す。遥か眼下の、無限の魂の繋がりを生み出す悪魔に向け、振り返りながら白鍵を翻す――
「させるかよ」
瞬間。
目の前で、夜色の狐耳がピンと立つのが見えた。




